最終章でやっと「人はなぜ病気になるのか?」という疑問に
少しは答える形にはなっていますが、そういった進化の視点が
現実の医学にどのように役立つのかに関して具体的な話が
ほとんどありません。
特に、進化医学が臨床医学をどのように変えていくのかなどに
ついて示唆に富んだ議論がほとんどないのが期待はずれでした。
著者はヒトが長い年月を経て生活環境を変化させていく中で、かつて環境に適した変異であったものが、現代では疾患を引き起こす要因になっていることを、いわゆる文明病にスポットを当てながら解き明かしてゆく。
ある意味でミステリーの謎解きのようにも読めて、かなりスリリングである。医療に従事している人なら、此処に挙げられている疾患への対処法のヒントを掴む事も出来るのではないだろうか。非常に懐の深い名著である。