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非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学 (光文社新書)

価格: ¥756
カテゴリ: 新書
ブランド: 光文社
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現代経済学へのコンパクトな入門 ★★★★★
著者はまえがきで、新しい経済学はこの30年の間で急速に
発展し、いまでは経済学の一つの核をなすようになってきた。
この新しい経済学が、情報の不完全性と情報の非対称性に
注目するステイグリッツ経済学であリ、本書はその入門を目指
すと書かれている。

初めのほうで、主流派経済学の新古典派の考え方とそれでは
説明できない経済現象が、解説され、後半で、本題の、情報の
非対称性に着目するスティグリッツの経済理論が、解説されて
いる。

途中、スティグリッツの学生時代の話が出てきて、アメリカの
当時の経済学の状況や大学教育がわかるのも面白い。MITで
はアカロフとともに勉強したとか、学生は全寮制で、徹底した
少人数教育だったとか、興味深い話がいっぱい出てくる。

そのせいか、本書中ごろには、非対称的情報の最初の論文とな
ったアカロフのレモン市場の話の解説も出てくる。

全体に、主な概念について簡潔な図表を用いたコンパクトな解説
がされていて、本格的な教科書に進む前の有益な学習ができるよ
うになっている。

最終章では、90年代の日本経済が、不完全情報と非対称性の
観点から説明されている。ここでの、実物体系と金融の連関の話
は、明快で有意義である。

というわけで、新しい経済学の有益なガイドブックであった。
おそらく、学部生の副読本としても役立つと思われる。
最新の経済学って結構プリミティブ ★★★☆☆
完全情報市場モデルに基づく古典経済学に対して、各プレーヤーの持っている情報に差があることをモデルに組み込んだ新しい経済学の成果を紹介するとなっているが、それぞれの結論は、私にはトリビアルであると思えるものが多かった。特に、時間が出てこないのがかなり不満であった。

時間が出てこないと言う意味で、化学反応における平衡論に似ていると思った。これは、普段私が岩石学に対する不満と同じ不満を感じたからだろう。岩石学でも、現在の岩石の成因を、もっぱら平衡論で議論することが多い。しかし、実際の反応は平衡論だけでは済まずに、反応速度論が重要になってくるはずである。

経済の振動現象(好況不況の波ね)は、フィードバックの遅れ、投資の量子性(生産設備への投資はある程度まとまったお金が必要になるなど)が極めて重要な役割を果たしていると私には思える。それなしで「最新の経済学の成果」と言われてもねえ、というのが感想だ。

ただ、経済政策については、倫理学的な評価が政策論争中でまだ幅を利かせているし、倫理学的/警察国家的対策が声高に叫ばれることがしばしばである(例えば、本書でもしばしば取り上げられているモラルハザード問題に対して、そのようなことをする悪人を罰すれば良いというだけの意見)現状を鑑みるに、経済を機械的にとらえて、システム設計をする必要を考えさせてくれる本書のような経済書は、特にジャーナリストや政治家に読まれてしかるべきだろうと思う。
新しい経済学へ ★★★★★
これまでの経済学では、市場参加者は皆完全な情報を持っていることにしていた。
だが、これは明らかに現実に反している。
それを指摘したのがスティグリッツで、彼の思想をわかりやすくまとめているのが本書である。

情報が不完全なため、例えば中古市場では悪化が良貨を駆逐するような事態が発生する。
そのため、需要・供給の変動とは無関係に価格が固定されるようなことも起こる。

この「非対称情報系在学」は、私が将来の経済学を担いうると見ている「複雑系経済学」「行動経済学」と並んで、新しい経済学の主力となるかもしれない。
期待できる理論である。
スタンダードな知識に基づく現状への鋭い指摘 ★★★★☆
 完全競争市場を旨とする伝統的な新古典派では説明の難しい貨幣・銀行の存在や関心対象外の所得再分配等について、「非対称情報」という概念の導入により対応する「新しい経済学」を概観する1冊です。教科書でもよく取り上げられる「非対称な情報」下の市場の例として、中古車市場での「逆選択」の例、保険市場での「モラルハザード」の例がグラフでもって視覚的に判りやすく解き明かされています。
 「非対称情報の経済学」の特徴の一つは、ミクロ経済学で新しい知見を得るに留まらず、それをもってマクロ経済学へと果敢に踏み込んでいくことです。本書では、価格下落や賃金上昇については新規取引先・他企業労働者に伝達困難なため反応が鈍い一方で、逆に価格上昇や賃金下落はすみやかに現在の取引先・自社の労働者に伝わって逃げられてしまうリスクが高いため、企業は価格を上げたり、賃金を下げるのに及び腰になる(硬直性)ことを明らかにする等して、「非対称情報」が経済全体に及ぼす経路をまず明らかにします。そして賃金下方硬直性が引き起こす失業増については、短期的・循環的なもので長期的に生産性向上目指す構造改革・規制緩和で解決を図るのは筋違いであり、また金利に関する「非対称情報」を端緒にして企業と銀行が互いのバランスシート悪化を通じて連鎖的に生産または貸付縮小へと追い込まれてゆく状況が、執筆当時の日本経済に発生していることを指摘している点、見逃せません。
 ただ、おそらく本書が扱う範囲対象外だからなのでしょうが、このようなデフレが長期にわたって放置された責任の主体と処方箋について明確にされておられないのが残念です。
伝統的経済学からの脱皮のジャンピングボード ★★★★☆
 あなたは何時の時代経済学を学んだだろうか?
「神の見えざる手」に象徴される経済概念・モデルを使用した教科書の経済学が長きにわたり主流派を形成してきた。
 最近、「レモン市場」「モラルハザード」「トレードオフ」これらの言葉を眼にしたことはないだろうか?
 本書は、「非対象情報下の市場経済」の基本的概念を社会人向けに解説し、同時に90年代の経済分析をスケッチする。