日本人には遠いアフリカでの中国人の活動
★★★★☆
日本人には非常に遠いアフリカ。そのアフリカに隣国の中国が非常な勢いで進出している。その実態を日本人はあまりに知らずにいる中、本書が日本語で読める様になった。アジアの大国である中国が今世界で何をしているのか、日本人はあまりに無頓着すぎる。今後は中国はアジア外で国際政治的な問題に関わる事で、発言力を高める局面と問題に陥る居面が発生する事が予想される。その実態を知る為に是非この本はお薦めである。非常に綿密な取材をもとに書かれている。
また、中国人が非常にタフな形で海外に出ていく姿は、公的援助や商社的な進出とは全く違った形で行われており、今の様な内にこもる日本人には決してマネのできないもので頭が下がる思いもする。但し、本書を読めばわかるが、決して地元の経済発展の為ではなく、自己利益の為に働いている状況もしっかり認識する必要がある。この点が将来問題を引き起こす要因になる可能性があるので留意する必要がある。
いずれにせよ中国を決して侮ってはいけない。
マスメディアの報道より詳細で、地歴にも触れている。
★★★★☆
もっと簡潔にまとめることができたのではと思う。
要点以下の通り。
○アフリカは石油、ガス、ボーキサイト、銅、ウラン、ダイアモンド、金、レアメタルに恵まれている国が少なくない。
○アフリカの権力者は、自分と家族、部族の利益をいかに獲得するかに熱心で、国民のことなどなんとも思わないような者が少なくない。権力につかねば私腹を肥やせないのだ。
○欧米の支配者たちは、労働力たる奴隷、資源を収奪ないし安価に手に入れアフリカを疲弊させた。そしてここ30年くらいは、先進国は人道的な見地から、アフリカの指導者の腐敗を抑えるような、民主化が進むような条件を満たさなければ、援助を控えるようになってきた。そのことはアフリカの多くの国々の権力者にとっては不都合なことだった。
○そこに後発進出者として現れたのが中国。人権、腐敗については内政不干渉を決め込み、エコノミックアニマルのように猛烈に働き、アフリカの国々の権力者に喜ばれた。そして、中小規模の商売においても熱心に働くので、現地人の商業はしわ寄せを受けている。
○中国は、国交、エネルギー、その他の資源の獲得を目指しての国を挙げて進出し、アフリカの有用性を世界に再認識させ、グローバリゼーションの潮流に押し出した。
○一方、現地で働く中国人は、いろんな調達を中国人コミュニティーで調達し、アフリカ人との交わりは浅い。そして、アフリカ人は怠けものと思っている。
○傾向として、アフリカは新しくやってきた者が大きな未来を描いて見せても柔軟に対応できたことが一度もない。アフリカは外部に対して聞く耳を持たない。
○中国はかっての支配層である欧米人とはアフリカでの振る舞いは異なるが、アフリカ人の嫌中感は強まって、今後もうまくいくとは限らない。
体を張った取材に脱帽
★★★★☆
政府筋に賄賂を送り森林伐採権を手にする中国企業。
建設大臣に賄賂を送り宅地整備プロジェクトに入り込む中国企業。
誰に賄賂送れば効果的なのか顔合わせをセッティングしてくれる中国大使館。
中国政府がアフリカ諸国に経済援助し、インフラ整備を促す。
世界銀行(アメリカだ)のルールにより、そのインフラ整備は公開入札。
圧倒的安値で中国企業が落札。先進諸国の民間企業はどこも敵わない。
中国企業はスキルの低い現地住民をあまり雇用しない。
格安でそれなりのスキルを持った中国人を本土から呼び寄せる。
やってくる中国人はあくまで出稼ぎであり、金を稼ぐためにやってきているから現地に溶け込むことはない。金も使わない。
アフリカで働く多くの中国人は、働き始めるまで働く場所が危険(たとえばナイジェリアの石油紛争地域)だと言うことを知らない。働く前は良いことしか言われないから。報道されていないだけで、アフリカで働く中国人は何人も誘拐されたり殺されたりしている。でも、もし危険だと知っていても働きたがる中国人はたくさん居る。中国の農村で燻っているより、多くの金が稼げるから。
二人の著者と一人のカメラマンの共著である本書は、賄賂を送る中国企業、サポートする中国政府関係者、現地で働く中国人、賄賂を受け取るアフリカ諸国の政府筋、そういう多くの人たちに取材を試み、スーダン秘密警察に拘束されるという危険な状況に遭いながらも、いまアフリカ諸国と中国の関係がどのようになっているのか、その現実を著している。
惜しむらくは、本書は現状報告にとどまっているように感じること。続編を大いに期待する。
アフリカってそうなの、中国ってそうなの!
★★★★☆
読み応えがあった。アフリカに対する「人道的支援」という高みに立った視点に問題があると気づかされた。だが、中国の内政不干渉主義、実利第一主義にも問題がある。そもそもアフリカに対する本書での中国のやり方は、東南アジアで日本がさんざんやってきたことではないか。エビの養殖場や加工場、バナナのプランテーションを作った東南アジアはどうなっただろうか。
また、アフリカの国それぞれの持つ歴史的背景が膨大で、中盤は少し読み疲れた。部族の族長感覚で一国を独裁してしまう首長ばかりなのも再認識した。
意欲的なドキュメンタリーだ。
愚劣な邦題にだまされるな
★★★★☆
原題"Chinafrique(中華的アフリカ)"は、かつてリアリティを持っていた"Francafrique(おフランスなアフリカ)"という言葉からきている。フランスが旧植民地諸国に対して、その独立後もいかに政治・経済的に支配力を温存しようとしてきたか、そしてフランスがアフリカから奪ってたものに比較して、そこに残したものがいかに貧弱だったか、本書の著者たちは容赦なく指摘している。いまアフリカで起きているさまざまな問題「原罪」を背負わなければならないのは明らかにフランスなど旧宗主国のほうであり、現在中国企業の進出がもたらしている問題も、結局はその「鏡」に過ぎない。しかし、そのような自己批判的なニュアンスが、邦題からはまるっきり抜け落ちている。だいたい本書の内容はそのほとんどが「中国はただアフリカを食い荒らしているだけではない」ことに注意を向けるものなのだから、それにこういう題名をつけるのはほとんど詐欺行為といってもよい。
確かに、現在アフリカに目覚ましい勢いで進出している中国政府+資本の複合体は、その行動論理が「資源開発の利権追及」というあからさまなものであり、多くの場合現地社会の事情に関しては無頓着なので、進出先で様々な軋轢を起こしている。メディアではとかくその軋轢ばかりが報道されがちだが、しかし一方で中国政府+資本の複合体は、これまでのアフリカに最も欠けたものー実際に経済発展というプロジェクトを起動させる実行力―をもたらしている。その結果、中国政府+資本の複合体は、おそらく、アフリカにとって「人権と民主主義」以外のすべてのものを与えてくれる可能性を持った存在になっているといっていい。そのことの善悪を問う前に、まずそういったアフリカの「開発と民主主義」をめぐる、厳然たる事実の認識から出発すべきだろう。