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民主主義がアフリカ経済を殺す

価格: ¥2,376
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日経BP社
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経済と暴力と民主主義 ★★★★☆
原題:Wars, Guns, and Votes Democracy in Dangerous Places

まず、邦訳タイトルは釣りですね。まあ商売と前著が売れたようですので、その流れでしょうか。
内容的には読み応えのある書であり、アフリカやいわゆる発展途上国とかかわりのある方は読まれることを勧めたい。そして単なる文献的解析評価でなく、現地での調査を重視してディスカッションしている姿勢は素晴らしい。ただ、最底辺の10億人が住む国をリストアップしてあるが、それはあくまで経済という文脈だけからの評価であり、たとえば小生が長いこと係わりをもったガーナもリストされているが、本書の内容とはかなりと言うか、ほとんど当てはまらない。であるからステレオタイプ的な理解は危険であり、また経済という指標で仮に日本の優位性を説くならば、それは世界有数な経済大国であろうが、果たして幸福度なる指標で計測したどうなるのだろうか?
備忘録的にメモしておきたい。
民主主義と政治的暴力の相関関係は、学術領域で既に決着がついている問題だと思うかもしれないが、ほとんど手がついていない。P27
これらの結果から私は、民主主義が最底辺国の社会を救うという「アカウンタビリティーと正統性理論」には、何かがかけているに違いないという重要な推測を得た。P28
「民主主義は最底辺の10億人の国では、暴力の危険性を高める」という観察結果 p30
政治的な共同体である「国家」(ステート)の建設を可能にするためには、その前にアイデンティティーの共有に基づく「民族国家」(ネーション)を建設しなければならない。P71
高い民族的多様性と政治的抑圧の組み合わせだ。このふたつが合わさって、アフリカの社会的選択に機能不全をもたらしていた。P89
現在の国境線を引き直すのではなく、現在の地図上からだんだん国境線を消去していくモデル。P259
目次
序章 最底辺の国々の恐るべき逆説

第一部 現実の否定としてのデモクレイジー
第一章 選挙と暴力
第二章 民族間の権力闘争
第三章 煮えたぎる釜のなかでーー紛争後調停

第ニ部 現前する暴力と対峙せよ
第四章 銃―火に油を注ぐ武装
第五章 戦争―破壊の政治経済学
第六章 クーデター―誘導装置のないミサイル
第七章 破綻国家コートジボワール
第八章 国づくりの過程と条件
第九章 餌をもらうくらいなら死ぬほうがましか?
第十章 現実の変革のさなかで
希望の一冊(できることはいろいろあるみたいです) ★★★★★
邦題は若干ミスリードではないかと思われます。
情緒的な議論に陥りがちだからこそ本書の分析が重要なのに、この邦題では情緒的な混乱を
助長するのではないかと、心配してみたり。

経済的水準といった他の要因との組み合わせの如何によって、民主的と思われる選挙プロセス
の導入などが破壊的に作用する場合もあるということであって、著者が「成熟した」民主主義を
肯定的に評価している点は一貫してブレていないように思いますが。

むしろ所得水準や地理的要因、歴史的経緯、民族的・宗教的多様性などと並んで、情勢分
析のための一変数として、統治形態を定量的分析に導入しているのであって、場合によっては
(この場合を厳密に確定していく推論経緯も本書に詳しいですよ)民主的プロセスがネガティブな
影響を及ぼす場合もあることを提示しています。

しかしながら、経済学的な定量分析の威力たるやすさまじい。
一見するとそうした分析を適用し難いと思われる複雑な問題(かつ一般的認識に馴染まない
歴史的個別的な性格が強いと思われる分野)での議論の蓄積には活目。
社会学者や政治学者は、経済学者にもっと学ぶべきかもしれません。

そして分析から得られる提言もたいへんに重要だと思います。
「武力衝突はその動機となりそうな問題に対処することでは防げず、唯一、武力衝突自体の発
生を困難にすることでしか阻止できない」(184頁)など、本書の末尾でまとめられる提言以外にも、
あちこちに重要な示唆が満載です。

また、本書に代表されるように、世界には、困難な問題の前に踏み止まって真摯に努力を続ける
研究者や実務家たちが大勢いるのだと知らされることも、本書が伝えてくれる大きな希望かと。

本書の基礎となった研究のいくつかは、ここで検索できるみたい。全文は有料みたいですが。
http://papers.nber.org/
民主主義への遥かな道のり ★★★★★
 ポール・コリアー氏の前著をお読みの方ならご存じだろうが、コリアー氏はまともな学者である。人目を引く目的で過激な論を打つわけではないし、データの裏付けのないまま極論を展開するわけでもない。
 本書の邦題は、やりすぎじゃないかと思う。

 コリアー氏は民主主義=普通選挙という狭い概念と民主審議="普通選挙+前提条件"というもっと広い概念の二つの概念を使いわけながら本書を書いている。後者の民主主義が先進国で機能している民主主義であり、その上で前提条件の整わない国々で、普通選挙だけを導入しても機能せず、混乱の種になる事を示しているのである。

 コリアー氏は、民主的に政権を選べば全てがうまくいくと、単純に信じている人に警鐘を鳴らしてるのだと思う。

 そして、社会・経済が安定していることや暴力が無いことを、普通選挙より重要な事と考え、それらが普通選挙の導入だけでは達成されない事を示している。すでにイラクという失敗事例を見てる我々には、総論としてのコリアー氏の持論は理解できるだろう。では何が問題なのか?本書ではその理由が詳細に説明されている。
 為政者の利己心が長い時間をかけて近代民主国家を作り上げたというコリアー氏の持論は、不満な人もいるだろうが評者は納得が行く。

 また、本書は結論にいたる思考プロセスも示されているのが読んでいておもしろい。
 標準的な理論で説明できない事象がある時、その理由を推定する。この時の洞察の鋭さがコリアー氏の魅力であるが、それだけではただの評論家である。コリアー氏は経済学者であり、経済学的な手法、つまりデータをもとに洞察の妥当性を統計的に検証する方法を用いるのだ。本書に示された内容はそうした検証をへた結果だ。自分がカバーできないことは、数多くの他者の論文を引用しており、これもまともな学者らしい。

 本書が大変深刻な問題を扱ってるのは事実だが、知的興奮を覚える内容なのも確かだ。