異教の国家トルコとの死闘
★★★★★
地中海の制海権を握り繁栄を極める14世紀のヴェネツィア。その前に新興国トルコが現われ、長い長い死闘が繰り広げられます。
ヴェネツィアがかつて争ったジェノヴァなどと違い、イスラム教国であるトルコには、キリスト教国の常識は通じず、ヴェネツィア得意の外交も難航。国土の広大さと人口の多さで圧倒するトルコに押しに押されていく印象で、「アンティヒーローの国」ヴェネツィアに対するトルコのスルタン、マホメッド2世のヒーローぶり(ヒールという意味でのアンティヒーローではありますが)のほうにわくわくしてしまいました。
それでもヴェネツィアがこの強大な敵に対して粘り強く戦い、交渉し、なんとか乗り切っていきます。そのプロセスは、第1巻から塩野氏が強調してきたヴェネツィアらしさが存分に発揮されたものでした。
後半の第9話は、15世紀後半のある官吏の聖地巡礼記を紹介。ヴェネツィアがヴェネツィアらしく、聖地巡礼をシステマティックなビジネスにしていた様子が詳しく描かれていて、思わずにやりとしてしまいました。