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海の都の物語〈6〉―ヴェネツィア共和国の一千年 (新潮文庫)

価格: ¥497
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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ヴェネツィアという「国家」の静かな死 ★★★★☆
本シリーズを1巻から最終巻まで通読してみても、ヴェネツィアという国家が滅亡した要因について、明確な理由は見いだせない。
後世に生きる私たちは、「結果には必ず原因がある」という因果の法則に縛られているが故に、
国家興亡について、どうしても、ハッキリした、分かりやすい要因を探しがちである。

もちろん、ヴェネツィアにおいても、滅亡する理由は、あったであろう。
しかし、それは、少なくとも、明確なものではなく、様々な要因が複雑に組み合わさり、ゆっくりと衰えていったのであろう。
それはあたかも、人間が老いるに連れて少しずつ体力が衰え、最後に老衰で死んでゆくのに似ている。

どんな国家でも、永遠に存続し続けることはできない。
だが、いずれ滅亡を免れないのなら、ヴェネツィアのように、静かに滅びてゆきたいものだ。
都市国家ヴェネツィアの美しい死 ★★★★★
文庫最終巻では17世紀以降のヴェネツィアの衰退していく様を描きます。
地中海に浮かぶクレタ島を巡ってトルコとの戦争に明け暮れた17世紀。一方で、18世紀は絵画やオペラ、音楽などの文化が花開きます。ヴェネツィア自身が観光の対象となり、この時期のヴェネツィアは、塩野氏いわく「限りない快楽の都」となりました。
そして迎えた18世紀末。かのナポレオンの進軍をうけ、フランスかオーストリアかの二択を求められるヴェネツィアは、過去からそうしてきたように完全中立を貫こうとしますが、この時期のヴェネツィアにはかつての軍事力(陸軍)も外交力もなく、最終的にはナポレオンの前に無条件降伏に屈することになります。1千年の歴史をもつ海洋都市国家の最後が塩野氏独特の淡々と筆致で語られます。しかし、塩野氏は、その衰退の原因を指導者層の腐敗とか国家体制の過ちとかありがちなところには言及しません。「ヴェネツィアが優雅に衰えられたのは、ヴェネツィアの死が、…試練を克服してきた末に自然死を迎える人間の死に似ていたから」と第13話の最後で語っている塩野氏の言葉が印象的でした。すなわち、独特の共和制を維持してきたヴェネツィアの最後は(指導者層の努力にも関わらず)必然であったと。
最初から読んできた読者には極めて腹に落ちる言葉であると思います。それだけヴェネツィアという国家は独特の気質と特徴ある政体をもち、イタリアいやヨーロッパのなかでも存在感を示してきたといえるのでしょう。塩野氏の作品はどれもそうなのですが、いつか本書をカバンに入れてヴェネツィアを訪れてみたい!と思わせる大作でした。
一気に読める ★★★★★
最終巻では、ヴェネチアの落日、そしてヴェネチアの滅亡が描かれます。
落日といっても、当時のヴェネチア指導部に特段の失政があったわけではない。
ただ、新航路の発見で、ヴェネチアの根城であった東地中海が、徐々に海上交易の中心から外れていった。
そして、近代国民国家という「化け物」勃興の時代に、ヴェネチアのような寡頭政都市国家は相容れない存在となっていった。

最後は、ナポレオンの大活躍(横暴?)にきりきり舞いする哀れなヴェネチアの姿が描かれます。
でも、塩野さんは単に「哀れ」「愚か」で済ませたりはせず、あくまで、ヴェネチア指導者の必死の努力を活写し続けます。
我々だとつい安直に、「ヴェネチアのここが敗因だ!」「現代日本はヴェネチア史のここに学べ!」とか、安っぽい教訓でまとめようとしがちですが、塩野さんにはそういう意図はないらしい。
現代から見て「こうすりゃよかったのに」、という類の後出しジャンケンを好まないのでしょう。

滅び行くヴェネチアに感情移入するもよし、現代日本への教訓を読み取るもよし。
読み方は、人それぞれ。
だからこそ、いつまでも、広く読まれる歴史小説たりうるのだと思います。