金正日に見初められて妻になった、当時北朝鮮のトップ女優だった妹はやが
て精神を病んで入院。両親は憤死し、姉は自らの子供のあとを追って平壌を
脱出するが、最愛の長男はソウルで狙撃され死亡する。
そして家族を襲う凄まじい悲劇。後半は、分断された朝鮮半島に翻弄された
一族の受難のドキュメント記録である。
この本は単なる金正日に関する暴露本ではなく、朝鮮半島の女性の歴史でも
あり, 著者とその母親、そして祖母が生きてきた、女の歴史でもあるのだ。
著者は女性の解放、民族の解放を求める気運がどれだけ強かったか。日本軍
が去った後の「解放」を、朝鮮民族がどのように受け止めたのかなど、むし
ろこちらの方に重点がおかれている。
これまでの「北朝鮮暴露本」にはなかった、ひとつの家族の歴史を知る意味
で興味深い。
隣国、朝鮮半島の人たちのことを知る上で、読んで良かった。
時あたかも拉致家族が日本に帰ってきている。
この本を通して北朝鮮の実態が少し見えたような気がする。 多少読みにくい
点はあるが、知られざる北朝鮮事情に関心があれば一読の価値はあるだろう。
金正男という人物が、幼い頃からどういう環境で育ったのか
どのようなキャラクターであるのか等、詳しい記述があり
資料としての価値も高いと思う。
写真も所々あり、ロイヤルファミリー専用体育館で
テニスをしている様子などが興味深かった。
水着姿でテニスをしている男性は、温水プールで水泳後に
テニスをしているのだろうし、長いスカートをはいた女性は
裸足でテニスをしている写真だ。
また、学生祭典を催したときに、著者が感じたことが
書かれていて、その内容は(私の要約ですが)
「喫茶店もない商店もないこの国に
世界中の人々がやってきてどう感じるのだろうか
(貧乏なことをさらすだけ)と不安に思う。
手持ちの朡?の中から一番ましな服装をして、おそろいの日傘をさして
外国人の滞在する宿舎の周りをいったりきたりして
貧しさをカモフラージュしているのだ・・・・
特権階級の人でさえ(だからこそ)疑問に思っていたことが
率直に書かれていて上下巻での分量の割に読みやすかった。