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狭山事件 ― 石川一雄、四十一年目の真実

価格: ¥2,376
カテゴリ: 単行本
ブランド: 草思社
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   昭和38年5月1日、埼玉県狭山市で16歳の女子高校生「中田善枝さん」が下校途中に行方不明になった。同日深夜、「善枝さん」の自宅に20万円の身代金を要求する脅迫状が送りつけられ、その3日後、彼女は絞殺死体で発見された。埼玉県警と狭山署は鋭利誘拐殺人事件として捜査を始め、「石川一雄」という被差別部落出身の青年(当時24歳)を別件で逮捕する。6月23日、石川青年は身代金目当てに「善枝さん」を誘拐して殺したことを自供。昭和39年3月11日、浦和地裁で死刑判決が言い渡されるが、2審の東京高裁で一転、無実を訴える。同高裁は10年に及ぶ長い審理の末、死刑を無期懲役に減刑する判決を言い渡した。この間、ズサンな見込み捜査と、不公正な裁判に世論の注目が集まり、「石川一雄」の冤罪を晴らす再審請求運動が広がっていく。いわゆる「狭山事件」である。

   著者の鎌田慧は『弘前大学教授夫人殺人事件』や『死刑台からの生還』(「財田川事件」)で、冤罪事件を追ったフリーのジャーナリストだが、本書は単なる冤罪物語ではない。捜査官の毒々しい功名心と被差別部落に対する差別意識、被差別部落の貧困が生んだ無知と非識字、凶悪な犯人像を作り上げ捜査陣の“お手柄”を美談化する新聞の軽薄な正義感、捜査員の作意を疑わない裁判所の司法仲間意識。「狭山事件」は、そうしたものの複合汚染的結果だった。著者は、被差別部落に育った若者の、小学校にさえ通えなかった悲惨さと、文字から疎外されたものの苦悩と恐怖を、地を這うような取材で再現してみせる。そして「文字を使いこなせる人間が、文字を使えない人間に寄り添うことのできない傲慢さ」と、裁判所の人間洞察の貧しさを、冤罪の要因として指摘するのである。

   しかし、無知と非識字のゆえに「やったと言えば、10年で出してやる」という捜査官の甘言を信じ、一時は死刑台の下まで引ずっていかれた若者が、「三鷹事件」の死刑囚「竹内景助」との出会いを契機に文字に目覚め、やがて歌が詠めるまでに成長していく。その過程で「死刑囚」の前を通り過ぎていった群像の記録は、戦後事件史の裏面をさまざまに明かしてくれる。その意味でも『狭山事件』は、単なる冤罪物語ではない。(伊藤延司)

客観性に欠ける。凡庸な作品。 ★★☆☆☆
本作品も他の鎌田氏の作品同様、丹念な調査の上に書かれており、その点は評価できる。
しかし、この事件の真犯人が不明である以上、またドキュメンタリーの体裁で書かれた書物である以上、初めから終わりまで石川氏の冤罪を証明することに終始した論調には疑問を感じる。時にはこじつけとしか言いようのない論法も見られる。
また、こうした姿勢が行過ぎて、被害者の遺族に対して無礼であろうと感じられる記述も散見される。

この狭山事件は単なる未解決事件ではなく、いつの間にか同和問題に置き換えられてしまい、このためにより真実が見えにくくなってしまっている側面がある。
鎌田氏が真のルポライターであるのならば、このあたりに切り込んでほしかった。

狭山事件は一種のアンタッチャブルの問題、触れることがタブーの問題となってしまっているという残念な状況がある。
こうした状況を打破しなければ、この事件の真の解決は無いように思える。

残念ながら本書は突破口を開く一冊には到底なり得なかった。
勉強になりました ★★★★☆
当時は大変に世間をにぎわしたというこの事件、私は今年(2005年)になって知りました。興味があり、まず最初に読んだのがこの本でした。

この本は、真犯人を推理したり、つきつめたりしている本ではなく、疑いをかけられ、冤罪を主張し続けている石川一雄さんの無罪を信じる著者が、石川さんを応援し、もう一度ちゃんとした公正な裁判を求めている本です。私は、当然事件を目撃してませんし、何も言えませんが、ただ、警察の怠慢、被差別部落民への強く根深い偏見と差別意識、無責任を強く感じ、冤罪というものがどういう構図で出来上がっていくのか、勉強になりました。

事件そのものとは別に、石川さん自身が、読み書きが苦手で世事に疎かったことを悔い、刑務所で猛勉強されたというところなどは、感動もしました。強く深い一念が人をこんなにも成長させるのかと。

ただ、この本は、ある程度事件のことや経過を知っている人にはいいと思いますが、私の様に事件について全く知らなかった者には、少しわかりづらいと思うところもあり、星4つにさせて頂きました。


著者の取材力に脱帽 ★★★★★
冤罪の可能性が高いとされる同事件。著者は石川一雄氏の冤罪を信じて疑わない。冤罪なのか偽装なのか本当のところは分からないし、今後も真相が究明されることはないのだろう。裁判所が認定する「事実」と、実社会上の「真実」とは必ずしも一致しないのだから。しかし、著書を読むと冤罪が作られる構図がよく分かる。強引な、そして自白偏重の捜査…。冤罪の根源が、著者の数年にもわたる緻密な取材で浮かび上がる。そして、当時の石川氏の実態像がまざまざと蘇る。本作に描かれた実態は、数十年前の事件とは思えないほど鮮やかで繊細だ。著者の作品はどれも綿密な取材がされており、読んでいて面白い。そして冤罪事件を考える上では著書は必読といえる。
いったい真犯人は誰なんだ ★★☆☆☆
石川氏が無罪なんだと言うことは、読めば読むほど痛いほど分かります。
しかし、それが分かれば分かるほど気になる、「真犯人は誰だ」という問いには、本書は全く答えてくれません。
この問いに答えられない限り、狭山事件の真実に迫ったとは言えないのではないでしょうか。
その答えこそ、石川氏の無罪を証明する一番の近道のはずです。
フラストレーションの溜まる本でした。
初心者向けとしては今ひとつ ★★★☆☆
石川氏の裁判の経緯を中心とした作りになっています。
著者の基本的な関心が石川氏の冤罪の証明にあるようなのでやむを得ないと思いますが、そのために「狭山事件」のことをよく知らない人が読んでも、どうしてこの事件がこれほどまでに様々な人の関心を呼んだのかが理解できないのではないかと思います。

特に、事件の関係者が5人も次々に変死していることや、被害者の一族の血縁に関する話など、狭山事件の「謎」に関する事項で石川氏の裁判に関係ない部分はほとんど記述されておらず、そこに興味を持っている人にとっては食い足りない内容になっています。

ただし、裁判での争点や提出された証拠については詳しく書かれているので、その点で狭山事件フリークには参考になるのではないかと思います。