50年代の消費者主義的な幸福感がいっそう強まり、月面到達競争が最高潮に達するとともに、60年代の広告界のムードは活気にあふれ、楽観的で、ときに革命的であった。この10年間の広告は、それとわかる進歩を売り込み(たとえば「水を加えるだけ」のタン社のジュースの素や、インスタント・オムレツなど)、その一方で古き良きアメリカの価値を強化しようとやっきになっている。
ショーン・コネリー、ウディ・アレン、サルバドール・ダリ、サミー・デイヴィス・ジュニアといったスターたちにバーボンから手縫いのスーツまであらゆるものを宣伝させて、マディソン街はアメリカ人に財布の紐をゆるめて消費者の巨大なばか騒ぎに加わるようせきたてた。この時代の終りに起こった社会変化はサイケデリックな渦巻きをもたらし、女性やマイノリティー解放して新たに意識に目覚めた人々を生み出した。物議をかもしたもっと驚くべき広告にも目を向けたい。たとえばタッパーウェアはその保存容器を「ワイフセーバー」といって宣伝した。
ダッジ・ダートのような忘れ去られた車から、シガレット(「このクリスマスはラッキーストライクのカートンを」)や食品(「ウーン、TVディナーだ!」)にいたるまで、この広告版画を集めたカラフルな本は、60年代アメリカの広くてすばらしい世界を探索する。(Book Description)