1995年に放映された『ザ・シンプソンズ シーズン7』は、この番組を代表するエピソードを複数含んでいる。「誰がバーンズを撃ったか?(後編)」、「魂を売っちゃったバート」、元大統領ブッシュ父が隣に引っ越してきた「ブッシュVSシンプソンズ」(元大統領がこの番組嫌いを公言していることを茶化したエピソード)。そして、『ザ・シンプソンズ』の決定版とも言えるエピソードに、「ハロウィンスペシャルVI~3Dの衝撃~」がある。当時は画期的だったCGI技術を使用して、初めてホーマーを3Dの世界に連れていき、さらに実写として、三次元の壁を壊した有名エピソードだ。姿形がせっかく進化したものの、当然のようにエロチックなケーキショップにたどり着いてしまうのだが。プロデューサーたちがコメンタリー映像で明言しているように、当時は大変な技術で、莫大なコストがかかったために、CGIシーンはほんの数分しか作成できなかった。ファンの中には、こちらの製作秘話のコメンタリーを特に楽しめる人もあるだろう。プロデューサーたちは、ビジュアル上のパロディや、3D世界の背景に現れるジョークについて、いくつもの解説をおこなっている。『ザ・シンプソンズ』が、ビジュアルのスタイルで遊び心を忘れず、リスクを負いながら最先端を行く創作を試みていた格好の例となっている。このコレクションで最高のエピソードとも言える「永久保存版!「ザ・シンプソンズ」の秘密」 は、番組の様相とスタイルがどれだけ進化してきたかを雄弁に物語っている。俳優トロイ・マクルーア(声優は故コメディアンのフィル・ハートマン)が司会を務め、未公開アウトテイクや『The Tracey Ullman Show』時代の番組初期の映像、さらに番組製作者のマット・グローニング、ジェイムズ・ブルックス、サム・サイモンについてみずから語る場面も少々ある。他にも、ホーマーがゲストのロックバンド、スマッシング・パンプキンズに、お陰で子供たちが“わたしにはおそらく与えてやれん明るい未来を願うことを止めさせることができた”から、暗い音楽をやってくれてありがとうと感謝する「ロック・ミュージシャン続々登場!」、バートがうっかりクラスティを税金“ごまかし”で逮捕させてしまう「クラスティの危機再び」とお宝エピソードもある。
全25話のエピソードの他に、コメンタリー、短篇、カットされていたシーンも満載で、このボックスセットをさらに価値あるものにしている。筋金入りのファンも、またここでテレビの前に陣取って何時間も過ごす言い訳にできる。一段とパワーアップして現時点では最高のコレクション。今後も『ザ・シンプソンズ』は留まることを知らず驀進していきそうだ。(Dan Vancini, Amazon.com)