原作・脚本・メカデザインが大友克洋、キャラクターデザイン原案が江口寿史という、もしかしたら日本で最も絵がうまい漫画家2人が手を組んだ劇場用SFアニメーション。
近未来、高齢化が進んだ社会に対応するため厚生省が開発した老人介護機械・自己増殖機能をもつ第6世代コンピュータ「Z001号機」。だが、このコンピュータはサンプルに選ばれた老人を取り込み暴走。ボランティア女子大生やマスコミを巻き込んでの大騒動となる。メカ、美少女キャラ、ツボを心得たギャグなど、おたく的な部分にアピールする要素が盛りだくさんだが、それだけにとどまらず、独自に学習しさまざまな機械を取り込んで進化していくコンピュータのイメージはまるで『AKIRA』の金田や『攻殻機動隊』の人形使いを彷彿とさせ、まぎれもない本格的SFに仕上がっている。(田中 元)
ユーモア溢れるSFアクションアニメ
★★★★☆
個人的に問題はなかったけど古い作品なのでキャラデザの好みにはバラつきがありそう。
AKIRA、スチームボーイなどが好きな方には逆に嬉しかったりすると思います。
音声選択で5.1chはあるけど動作音、低音などの迫力にかける。
画質はHDマスター版というだけあって大変良好でした。
同じ年代に発売された他のDVDと比べるとよく分かると思います。
「老人医療機器の暴走」という奇抜な設定に隠れがちですが、登場するキャラの設定や、
笑いあり感動ありといった話の構成など、内容的な部分も非常によくできた作品です。
現在では高齢化社会、老人介護問題は世間一般に知れ渡ってはいますが
20年近くも前にこれらを題材にした作品を制作する作り手の先見性にも驚くものがある。
特典についている設定資料はキャラクター設定資料集とメカニック設定資料集の二つがあってなかなか見応えがありました。
現代のアニメ作品も素晴らしいものは多いですが、こういった質のいい一昔前の作品も見ておいて損はないと思います。
厚生省をなめるなよ!
★★★★★
1991年公開の一風変わったSFアニメ。厚生省(当時)が開発させた最新型介護ロボットが老人を乗せたまま暴走し街で自然で大暴れする・・・という内容。
このアニメの魅力は沢山ある。まず作画が素晴らしい。かなりの高クオリティである。
そしてストーリーもコメディを交えながら、我々に訴えかけている事は高齢者介護の問題と今の日本にとって至ってシリアスな内容である。息をつかせぬ展開の連続で自然と話に引き込まれ夢中になって見てしまう。
キャラの魅力も高い。主人公の晴子は言わずもがな魅力があるが、最も印象に残ったのは厚生省の役人寺田さんだ。彼は最初は融通のきかないお役人という感じだが、話が進むにつれ介護に対する彼の真剣さが伝わってくる。そして名言「厚生省をなめるなよ!」。これは本編を見て確かめてほしい。
また晴子の学友や、おばあちゃんの自我を持ったロボットなど他にも沢山の魅力的なキャラがいる。
BGMもこの変わったストーリーの世界観を決定づける要因となる非常に素晴らしい音楽だ。耳でも画面に釘づけにされる。
また90年代前半の作品という事で、近未来作品でありながらいい意味で郷愁にかられる。だが全体的に精密に作りこんであるので決して古さを感じさせない。すごいバランスのいい作品。
当時より高齢化社会がより深刻化している今だからこそ、余計に見る価値のある秀作だと思う。
HDリマスターの功績あり
★★★★★
もうかれこれ18年前の作品です。
大友克洋氏と江口寿史氏によるコラボ作品です。
最近の「萌え」やら「精神論」「癒し」「登場キャラは皆、女の子」
系に見られる右にならえ的な作品ではなく、本当に自由に作られた
エンタテイメント作品に思えます。
終始、痛快爽快なテンポでありながら、社会風刺的なところもしっかり
押さえてあります。
当時のファッション・アイテム・社会情勢・電話・パソコン等も
リアルで体験した世代としてはとても感慨深いものがあります。
以前発売されたDVD版を既に持っていましたので、このHDリマスター版
の購入を躊躇しつつ、いつの間にか発売から4〜5年経過してしまいました。
他の方のレビューに惹かれて、今回とうとう購入するに至ったのですが、
目からウロコの高画質化に本当に驚きました。
メニュー画面等もDVD版に比べ色々と凝った造りになってます。
42型フルHD液晶でDVD版では真ん中に小さく、しかもボヤッっとしか
映らなかった画像が、リマスター版は見事に大画面となり、しかもクリアで鮮やか
に映し出され、尚且つグリグリ動いてくれます。
専門的なことは何もわからないド素人なのですが、HDリマスターと
24プログレッシブなるものが画像に与える効果を身をもって体感しました。
リマスター版を躊躇している方がまだおられるのでしたら、迷わずに
「買い」をお勧めします。
単純に面白い
★★★☆☆
大友克洋が監督しないとこんなにも面白い作品が生まれるんだってビックリしました。やっぱり大友克洋って監督に向いてないんですかねぇ。大友作品にありがちな薄っぺらいアート志向が影を潜めてとても観やすかったです。完全に監督のセンスですね。おそらく大友克洋の脚本も大分削ってるんじゃないでしょうか?北久保弘之の演出力によって初めて映画に成り得たという事だと思います。これなら普通の映画ファンや普通の女の子も観れると思います。
お年寄りに対する温かい視線が伝わってきた
★★★★★
迫りくる超高齢化社会を乗り越えるために国家の威信をかけて開発された、全自働介護用ロボット「老人Z」。これまでの科学技術をはるかにしのぐ「自分で増殖する」機能を備えた「第六世代コンピューター」とは。この国家的プロジェクトの実験に選ばれたのは身よりのない87歳の老人、喜一郎。
その喜一郎を介護する看護学校の学生ハルコが主人公。しかし喜一郎の細胞一つ一つに組み込まれた老人Zの触手は、喜一郎の記憶や外部の刺激に感応し、暴走しはじめる・・・。
映画を観ていて微笑ましいのは、老人ハッカーの3人組。大病院に社会的入院させられている老人三人が、喜一郎を心配するハルコに頼みこまれて、老人Zを制御する厚生省のコンピューターにアクセスを企て、成功するシーンは楽しい(それで老人Zは暴れはじめるのだが)。ハッカーとは若者だと思っていたが、このアニメでは「昔取った杵柄」で老人が鼻をかみかみ、病院の端末から国家機密に侵入、老人Zをさらに手に負えない巨大ロボットにしてしまう。
大友克弘×江口寿司の元師弟コラボのブラックユーモア・・とあったが、別に「ブラック」ではない。2人ともやさしいですね(笑)。「老人頑張れ」「社会は老人を役立たず扱いするな」というメッセージが伝わってきた。この映画って観終わったあと、カタルシスあると思う。あれだけ老人Zが東京を破壊しまくってくれると(笑)。