謎解きと冒険
★★★★☆
本作は,表題作と『黄金の虎』の二本立てとなっています。
表題作の『二十面相の呪い』は,大まかにいって三部構成からなっています。
第一部は,「古代エジプトの巻物」の争奪戦。
密室トリックに対する「読者への挑戦」とその「種明かし」いう形になっており,ジュブナイルの王道といったところです。
第二部は,「真珠のゾウ」の争奪戦。
第一部と同じパターンながら,小林少年を明智小五郎がフォローするといった場面がでてきます。
第三部は,「二十面相の隠れ家」での戦い。
ここでは,シリーズでお馴染みの「ポケット小僧」が活躍します。
もちろん最後は,明智側の勝利で幕を閉じます。
『黄金の虎』では二十面相は出て来ず,少年探偵団と自称「魔法博士」との知恵比べ(ゲーム)というストーリーになっています。
もっとも,ゲームという割には,小林少年はけっこう危険な目に遭っていますが…。
そして,やはり最後は小林少年を初めとする少年探偵団の勝利で終わります。
『二十面相の呪い』も『黄金の虎』も,おとなの目で見ればマンネリ化が目立つのですが,少年の目で見れば,純粋な謎解きとしてかなり読み応えがあると思います。
特に,前者は謎解きの醍醐味を,後者はそれに加えて冒険のスリルを味わえる展開となっています。
マンネリ・換骨奪胎・翻案などのマイナス点を割り引いても,やはり乱歩の筆致は読者を魅了して止まないと思うのです。
懐かしき『黄金の虎』
★★★★☆
小学生時代、表題作よりも、併録の『黄金の虎』の方が、非常に印象に残った。
怪盗として活躍するよりも、良家の美少年をいじめて楽しむ方に情熱を傾けているかのような二十面相の姿には、もう飽きたと感じていた時に、全く違う展開の短編に接したので、それだけ印象に残ったのである。
そして、少年探偵モノを全て読んでしまい、他の同年代の推理小説ファンと同様に、江戸川乱歩編『世界短編傑作集』へと進んだ時、私は再び驚く事になった。
『黄金の虎』は、ジャック・フットレルの『十三号独房の問題』を、小林少年の活躍譚として翻案したものだったのだ!
もっとも、だからと言って『黄金の虎』への評価は、変わらなかった。
「二十面相の呪い」と「黄金の虎」の二本立て。
★★★★☆
このシリーズもあと三冊。今回は、「二十面相の呪い」と「黄金の虎」の二本立て。
「二十面相の呪い」は、いつもの二十面相 vs. 明智小五郎+少年探偵団、というパターン。当時、流行っていたのだろう、エジプトのミイラの呪いを織り交ぜてる。
内容はいつものとおりだけど、この話では、二十面相と明智の知恵比べが前面に押し出されているのが面白い。
「黄金の虎」は、さらに進んで、相手は二十面相ではなく、どこかの物好きな金持ちの犯罪趣味に少年探偵団が挑むという話。これは、これで面白かったけど、やっぱり二十面相が出てこないと、このシリーズは物足りない。
このくらいになるとネタ切れなのか、舞台設定等も苦し紛れな感じが否めないが、子どもの頃はそんなことを全く意識せず、単純に楽しめた。それはそれで幸せだったなぁ。