郵便局の臨時配達人として口を糊する、その日暮らし。ビールの6本パックで気を紛らわし、競馬に興じ、女の尻にくっついて眠る。そうしなければやっていけないのも純情さ故なのか、優しさ故なのか、まっとうすぎるからなのか。
郵便配達人の仕事の実態と腰の据わらない日常生活を織り交ぜながら、同じような無為な日々が過ぎていく。
本書の終わりで主人公は「小説でも書くか、とおれ俺は思う。それからおれはそのとおりにした」と記している。
そう、始めなければ何も変わらない。開眼への長い道のりだったのかもしれない。
この作者を知るには必要な本だ。「多くの処女作は本人の自伝もどきである」という文句を如実に表している。