ついに、われらが小澤征爾が、日本人、いやアジア人として初めて、60余年の歴史を誇るウィーン・フィルのニューイヤーコンサートの指揮台に立った! ハプスブルク王朝時代からの伝統文化を継承する世界最高のオーケストラ、ウィーン・フィルは、ユーロ通貨開始の国際的記念の年に、ヨーロッパを代表し、三顧の礼をもってアジアの偉大なマエストロを迎え入れたのである。この録音はその歴史的なドキュメントでもある。
この重大な演奏会にあたって小澤は普段にもまして綿密な準備で臨み、ウィーン・フィル楽員もそれに最高の演奏でこたえている。「こうもり」序曲でのロザムンデのアリアの哀愁のメロディでの滴り落ちるような美音、「悪魔のダンス」でのたたみかけるようなエネルギッシュな迫力、「ウィーン気質」での弧を描き、弓がしなるような独特の緩急自在なリズム、「チック・タック・ポルカ」での息を呑むスピード感、そして「美しく青きドナウ」で微妙に甘く漂う葡萄酒のような芳香、「ラデツキー行進曲」での小澤ならではの楽しさいっぱいの和やかさ。すべてがすばらしい。
それにしても、小澤の全身から発される生命力のオーラは本当に凄い。人種も文化の違いも越えて、誰もが魅惑されてしまう。ウィーンで小澤が聴衆にも音楽家たちにも絶大な人気を誇るのは当然だろう。
この演奏全体で特に感じられたのは、音楽全体に「愛と幸福のしるし」が満ち満ちていることである。困難と不安のなかで迎えた2002年の冒頭に当たって、「これから再び明るい時代がきっとやってきます! 希望に満ちたいい年になりますように!」という熱くポジティヴなメッセージがここで発信されたことの精神的意味はとても大きい。
2002年秋からのシーズンでいよいよウィーン国立歌劇場の音楽監督の地位につく小澤征爾。ウィーン楽壇と小澤の結婚によって、両者とも画期的な飛躍を遂げるのではないか。そんな期待に思わず胸がふくらむのをどうして抑えられようか?(林田直樹)
情熱を感じた名演!
★★★★★
小澤さんのオーバーな指揮は賛否両論だが、
僕は個人としては理屈に抜きに楽しめました。
ここ最近のウィーン・フィル ニューイヤー・コンサートを振りかえってみても、
どうも爺臭い緩慢な指揮や、やる気のなさや予定調和、はたまた空周りのユーモアや演出が目についていたので、
僕は小澤さんの若々しいダイナミックな指揮ぶりには新鮮さを強く感じる。
(僕的には、C・クライバー以来の名演だと思う・・・)
何よりも真心と熱意がこもった指揮が小澤さんの真骨頂だと思う。
師匠であるカラヤンも、かつて「小澤の指揮はマジックだ!」と言っていたが、
まさにそれが随所に見られる演奏会だ。
特に「こうもり」と「悪魔の踊り」は力強くメリハリが効いていて秀逸だ。
世界のオザワは平和の使者だった!
★★★★★
曲については私が語らずとも他のレビュアーが語ってくれているので、今さら言える目新しいこともないだろう。
そこでちょっとしたトリビアを・・・。
実はそれよりも私が彼のニューイヤーで膝を打ったのは別のことにだった。
恒例の新年の挨拶、小澤は国籍さまざまなウィーン・フィルの楽団員たちに、世界中の言語で挨拶を連呼させた。そしていよいよ小澤の番、と思いきや、なんと彼はライナー・キュッヒルに「あけましておめでとう」といわせるのである。日本人を妻にもつから、とレディー優先のお国柄に似合う実に洒落た演出である。
そしてもっとも驚くことに小澤自身は「新年好(シンニェンハオ)」と締めくくるのである!!
なるほど!小澤は日本生まれではない。彼の生まれは戦前の満洲・奉天市(現・瀋陽市)。しかも彼の父「小澤開作(開策)」(満洲発展に貢献した)によって名づけられた彼の名は、満洲事変の発起人、板垣「征」四郎と石原莞「爾」から一文字ずつ取っている。
中国人楽団員がまだいないウィーン・フィルで「新年好」と唱えるのに彼以上の適任者がいただろうか。
新年早々、実にセンスのいい洒落た演出ではないか。素敵な挨拶に、それに続く危なげない実に堂々とした演奏。
世界の小澤はまさしくこの日、「Ozawa in the World」となったことを世界に示したのだ。
小澤のヨハン・シュトラウス!
★★★★☆
我が小澤征爾が、伝統あるこのニューイヤー・コンサートに初登場! こんなにこのコンサートが始まるのを、ドキドキしながら待ったのは89年のクライバーが初登場した以来だ! 小澤征爾が登場しコンサートが始まる! VPOとの関係も良好らしく、終始和やかに演奏は続いたが、小澤征爾の独特のメリハリがあるウィンナ・ワルツと指揮振りは評価が分かれるかもしれないですね‥? 同じシュトラウスでも、リヒャルトの方はコンサートでも沢山取り上げたでしょうが、小澤ぐらいの大家になると、軽い音楽のヨハンのワルツなどは殆ど取り上げないでしょう。だから小澤のワルツはコンサートスタイルに徹し、ダイナミックでリズム感の強い迫力のある演奏になりました。‥もう少し柔軟性があるワルツの方が私は好み何ですが‥。小澤の演奏中の指揮振りや表情もかなりオーバーです。 悪意があってやっていないのはわかりますが、人によっては気になるかもしれませんね‥。しかし、小澤の観客達を楽しませようと言う意気込みは演奏に集中力を生み、ほどよい緊張感とともに演奏にプラスに働き素晴らしいコンサートになりました!新年の挨拶も、色々な国の言葉で「明けましておめでとう」をしてくれて楽しめました!コンサートマスターのキュッヒルさんの日本語が上手すぎてビックリ!(奥様が日本人なんです!)とにかく期待通りの小澤征爾のニューイヤー・コンサートでした。最近、体調を悪くされたそうで、早く全快して素晴らしい演奏をまた聴かせて欲しいです!
世界のオザワ
★★★★★
ウィーンフィルといえば世界で有名なオーケストラ。
そのニューイヤーコンサートといえばシュトラウス。
小澤といえば世界が認める名指揮者。
これらが合体したら…
そんな世界的規模のすごいことが収められたDVDです。
バレエや乗馬学校の映像特典も面白いですよ。
我家の正月が高尚になった。
★★★★★
2002年以前から、NHKはお正月の夕方、ウイーン=フィルのNew Year Concertを放映いしていたが。
ま、なんとなく観る、聴く程度でしたね。
この小澤の指揮によって、我家のお正月は、全く替わりました。
長女が、吹奏楽部にいたこととか、色んなよ要素はありますが、日本人による指揮でこのコンサートが、身近になりました。
2003年のニコラウス=アンノクール
2004年のリッカルド=ムーティー
2005年のロリン=マゼール。
そして、今年のマリソ=ヤンソンス。
みんな見事ですね。
シュトラウスのポルカが中心になるのは仕方ないとしても、毎年同じような局なのに違って聞こえるということは、指揮者の資質によるのでしょう。
そういうことを考えると、音楽とは、奥行きの深いものだと本当に思います。