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からだ・演劇・教育 (岩波新書)

価格: ¥735
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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からだ・演劇・教育、三者の結びつき方 ★★★★☆
著者の『声が生まれる』のケーススタディのようなのが本書である。
前者は声と人生が密接に結びついていることを自伝を軸に示したような本で、本書はからだと生き様が密接に結びついていることを事例で示しているような本。
したがって、両者の間には18年の歳月が横たわっているものの、著者の演劇や身体の考え方の基本は変わっておらず、その基本の上に著者の考えは発展してきたのだと感じられた。

ただ、『声が生まれる』のほうが人に教えたくなるような話が多いかもしれない。同書を読んでさらに事例を見たい(18年前のものであるが・・・)と思ったら、本書を手に取るのがいいかもしれない。

本書は人間くさく、泥臭い実践の描写を主とする。その描写から、ともすれば管理に従順になりがちな身体が本来持つ可能性とはどのようなものか、そしてそれが具体的にはどのように展開しうるのか、ということがよく伝わってくる。

演劇技術やきれいな声を目指すのではなく、もっと基本的な人間性を回復させようとする、今と変わらぬ昔の著者の態度は大いに参考になるだろう。
不良は演劇部に入れて人間的に成長させよう! ★★★★★
宮城教育大学で演劇の教育効果を研究していた著者は、
不良生徒を更生させる為に、学校の芸術の単位として、
演劇科目を取り入れた高校に講師として招かれる。
どんな生徒でも入学させるその高校は、定員の5倍運営で、
世間からは、どうしようもない人間の屑の集りと見られていた。
遊ぶことと暴れることしか頭にない不良の屑たちが、
竹内先生によって立派な人間に進歩していく感動のドキュメントである。
不良とつきあって、不良に信頼されるコツは、
相手を不良の屑人間だと思わないことだそうです。
頭悪そうな不良でも、何故か、他人の表情を読み取る能力に秀でていて、
チラッとでも、不良に不良扱いする視線を向けると、蹴りが飛んでくるそうです。
大学教授兼演出家の竹内先生が、抜群の演技力を持っていたというわけではない。
竹内氏は、どんな人間からでも学ぶことは出来ると心底信じていて、
不良とともに、自分も成長したいから、不良高校生に演劇を教えに行くのだ。
不良との関わりに魂を揺すぶられてのめり込んでしまい、
貧乏になるのを承知で、宮城教育大学を退官し、
不良高校生に演劇を教えるのに専念し、
挙句の果ては体壊して倒れる竹内氏の生き方は胸を打つ。
自分が倒れるまで頑張るなんて、ウザイ熱血教師みたいだが、
不良相手に嘘の頑張りは通用しません。
演劇の授業の第一日目は、体をほぐすことである。
ようは、リラックスして寝なさいということですな(藁
何もしなくてもよい、何も覚えなくてもいい授業が、単位として認められるとは、
難しいことは嫌いで遊びたいだけの不良には人気大爆発するのも頷ける。
不良に「何々しなさい」という説教は、反発されるだけだそうです。
生徒にさせる前に、まず、自分が演技を見せて、興味持たせて、
「やりたい人は演技しましょう」
というのが竹内メソッドである。
自分でやってみたいと言っても、自分の演技の番になるとやっぱやめたという生徒もいるが、竹内氏はもちろん怒らない。
明日はやってくれると期待するだけである。
街中で喧嘩すれば怒られるが、
舞台の上なら迫真の演技と褒められる。
まさに演劇は暴れん坊の不良にピッタシですな。
肉体のカタスシスから演劇に導入し、
生徒に演じさせる脚本を、徐々に社会的問題意識の高い作品にして、
生徒自身に考えさせて、生徒の知的レベルも上げていくのですな。
最初はやくざが主人公で、立ち回りのある劇を演じていた生徒が、
卒業する頃には、資本主義の悪を糾弾するブレヒトの戯曲を演じるまでに成長するので感動的である。
竹内センセは左翼なのが気になるが、
竹内手法は有効だと思うので、不良生徒に悩む高校は、ぜひとも演劇に力を入れて欲しい。
演劇を芸術の選択科目にするのは難しいのなら、演劇部でも良いと思う。
不良はラグビー部やサッカー部というのは、20年前のTVドラマだね。
不良は演劇部に入れて人間的に成長させよう!
演劇させる脚本の選定に気を配れば、必ず立派な人間になります。
演劇を3年も4年もやって、舞台の外でも喧嘩するのが大好きな野蛮な性格のままの生徒さんは、
本当に指導教師に恵まれなくて可哀想に思います。
演劇はセリフのやり取りで構成される、対話を重視した芸術です。
他人との対話を重んじる民主主義の精神が、演劇していれば身に付く筈です。
演劇しておきながら、私が絶対正しいという独善的ファシズム思考しか出来ない演劇人は、脳に欠陥があると思います。
演劇の敵、芸術の敵、社会の敵は刑務所に隔離してほしいです。