トリオ作品の多いエディ・ヒギンズだが、これは意外や、ウィズ・ストリングス作品。しかも単なるウィズ・ストリングス物ではなく、往年のジョージ・シアリング・クインテットを手本にしたヴァイブ&ギター入りクインテットとストリングスのドッキングである。その結果、ヒギンズのリーダー作といっても主役はヒギンズではなく、弦とシアリング・サウンドがチャームポイントになっている。指揮とストリングス・アレンジを担当しているのは元トロンボーン奏者のベテラン、ディック・リーブ。このような説明である程度サウンドが予想できる人は、かなりジャズを聴きこんだ人のはず。要するに、瀟洒(しょうしゃ)でエレガントなサウンドなのだ。
まるで50年代にタイムスリップしたような気分になるドリーミーなサウンドに心が躍る。ヒギンズのジャジーなピアノを期待してはいけない。シアリング・サウンドの再現にうっとりとすべき作品なのだ。こういうアルバムを企画した人は偉いと思う。そして、シアリングなんて知らないという若い人にぜひ聴いてもらいたいと思う。(市川正二)