クリスティが称賛した記念すべきディヴァインの処女作
★★★★☆
濃霧の夜、事務弁護士のサイモンは、事務所を共同
経営している兄のオリバーから電話で呼び出される。
しかし、事務所に行ったサイモンを待っていたのは、兄の射殺死体だった。
その上、警察の捜査で、兄が強請をしていたと思しき証拠が
出て、彼に強請られていたと考えられる女性――サイモンが
かつて親しくしていた知人――が、殺人容疑で逮捕された。
兄と知人、二人の無実を証明するため、サイモンは独自の調査に乗り出すのだが……。
核となるトリックはたわいない代物で、それが解明された
段階で、誰が犯人であるかはおのずとわかると思います。
とはいえ、個性豊かなレッド・へリングたちの間で容疑を転々とさせていき、
トリックが割れた後でも動機の謎でプロットを牽引していく展開は秀逸です。
また、犯人の正体にかんしては、サプライズが仕込まれていて、
若干の不自然さはあるものの、人物描写の中で周到に伏線を
張っているため、納得させられてしまいます。
そして、事件を通じて辛酸を嘗めさせられてきたサイモンが、最後の
最後で報われる幕切れは、心地よいカタルシスをもたらしてくれます。
クリスティが称賛した記念すべきディヴァインの処女作
★★★★☆
濃霧の夜、事務弁護士のサイモンは、事務所を共同
経営している兄のオリバーから電話で呼び出される。
しかし、事務所に行ったサイモンを待っていたのは、兄の射殺死体だった。
その上、警察の捜査で、兄が強請をしていたと思しき証拠が
出て、彼に強請られていたと考えられる女性――サイモンが
かつて親しくしていた知人――が、殺人容疑で逮捕された。
兄と知人、二人の無実を証明するため、サイモンは独自の調査に乗り出すのだが……。
核となるトリックはたわいない代物で、それが解明された
段階で、誰が犯人であるかはおのずとわかると思います。
とはいえ、個性豊かなレッド・へリングたちの間で容疑を転々とさせていき、
トリックが割れた後でも動機の謎でプロットを牽引していく展開は秀逸です。
また、犯人の正体にかんしては、サプライズが仕込まれていて、
若干の不自然さはあるものの、人物描写の中で周到に伏線を
張っているため、納得させられてしまいます。
そして、事件を通じて辛酸を嘗めさせられてきたサイモンが、最後の
最後で報われる幕切れは、心地よいカタルシスをもたらしてくれます。
フーダニットの技巧に驚嘆し家族を巡る人間ドラマに心打たれる本格ミステリー処女作。
★★★★★
近年再評価され日本でも人気が高いイギリス本格ミステリーの巨匠ディヴァインの記念すべき処女作です。本書はあのミステリーの女王アガサ・クリスティーから賞賛されたという逸話が肯ける見事な出来栄えの傑作だと思います。かなり捻りを効かせたフーダニットの面白さもさる事ながら、悲劇的ではありますがシリアスな人間ドラマを内包し家族の在り方について深く考えさせてくれます。
事務弁護士サイモンは霧深い夜に兄オリバーから電話で呼び出され事務所に出向くが、そこで発見したのは何と兄の死体だった。やがて警察の捜査により兄が恐喝者だったという証拠が出て、サイモンの知人女性が逮捕される。兄が卑劣な犯罪者とはどうしても信じられないサイモンは事件の真相を求めて警察とは別に調査に乗り出して行く。
本書のミステリーとしての良さは物語の冒頭部分のさり気ない描写と無害で善良に見える人物の描き方の巧さでしょう。本当は異常なのに些細な事と思わせ欺瞞に気づかせないテクニックが抜群です。犯人の意外性も完全に虚を突かれて一瞬信じられなくなるサプライズで満点の出来です。そして私が注目する人間ドラマとしては、兄オリバーの妻マリオンが交通事故で顔に醜い傷を負ってから夫婦仲が悪くなり義弟サイモンに同情を求めて接近します。サイモンもまた妻リンダと仲違いし別居中という不幸な状況でしたが、今回の事件を契機に人間関係がこじれた原因を掴み出し元凶であるマリオンときっぱり訣別する道を選びます。他にも幼少時から甘やかされて育った娘と父との確執が生んだ悲劇の構図が読み取れる等、特に大人の読者のハートに強く訴え掛ける内容になっていると思います。本書解説には著者の魅力的な長編全13作品の一部内容紹介が書かれていてとても参考になります。現在翻訳されて読めるのは7冊で未訳の残り6冊も今のペースの年に1冊と言わず早くどんどん紹介して頂きたいと願っています。
気持ちよく読めるミステリ
★★★★☆
主人公は若い事務弁護士。やはり弁護士である兄から、夜中に呼び出しの電話がかかって来る。しぶしぶ出向くと、兄は殺されていた! 調べていくと、兄には思わぬ "別の顔" があった事がわかっていき…。
推理物としては大した事はない。トリックも犯人も、比較的容易に見当がつくだろう。だが、あっと驚かされる事はなくとも、謎がカッチリと組み立てられていて気持ちよい。また、読み物としても結構おもしろい。テンポが速く、ドラマチックな展開で、退屈しない。とにかく楽しく読める。