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悪魔はすぐそこに (創元推理文庫)

価格: ¥987
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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本当に悪魔はすぐそこにいた ★★★★★
目の前に人参がぶらさがっているのに、殆ど気がつかないまま最後まで読んでしまったという感じ。
読後思い出してみるとあちこちに犯人を示唆する手掛かりが沢山転がっているのに、怪しげな人間たちの怪しげな言動にすっかりミスリードされてしまった。もう1度読み直してみるといかに作者がフェアに勝負したか、どこに罠が仕掛けられていたのかより一層理解できると思う。
それにしても結末にはアッと驚かされた。

最近はクライムノベル的な推理小説が多く、こういう正統派的なものが殆どない。
その意味でこの1冊は非常に希少価値が高い。
すぐそこにいた「悪魔」は誰? ★★★★☆

大学のキャンパスという閉鎖的な“場”を背景に、過去の醜聞が現代に影を
落としたことで発生した殺人事件とその解明をサスペンスフルに描いた本作。

本作では三人称多視点の叙述形式が採られており、主要人物達の内面と外面、
その両面が克明に描写されることによって、それぞれの人物像が立体的に確立
させられています。そして、そうした人物たちに、血の通ったリアルなドラマを
演じさせることが、そのまま、事件の真相から読者の目を逸らさせる、巧妙な
ミスディレクションとなっているのが素晴らしい(各人物の、内に秘めた心情
まで描写されていることで、つい誤魔化されてしまいますが、たとえ心の内で
あっても、犯人が犯行を“自白”する、なんてことは当然ありはしないのです)。

また、本作では、特権的な名探偵のような存在がいないため、主要人物の中で、
誰が最終的に事件を解明するかについて予断を許さず、最後までサスペンスを
途切れさせないようにしているところも見逃せません。タイトルに込められた意味
が鮮やかに浮かび上がるクライマックスまで、読者は、誰が犯人で、誰が探偵だ
ったのか、手に汗握ることになります。


あと、序盤でさりげなく示される犯人の“クセ”が真相究明の
ための、決定的な手がかりであったことには、唸らされました。




キャラクター描写に長けた名作 ★★★★★
ミスディレクションに長けた作品という評判と、本文中にも序盤でかなり明確に示唆している箇所があるので、感の良い、ミステリを読みなれた読者であれば、犯人の目星はつくかと思います。
しかし、本書の優れた点は多視点の描写を取り入れてそれぞれの内面を描くことで、真犯人を隠すだけではなく、登場人物を重層的で深みのあるキャラクターとして描くことに成功している点だと思います。
「彼は○○である」という描写と本人の内面を描いたパートを組み合わせることで、見た目どおりではない人間の奥深い性格を示唆しています。事件の真相は明らかにされ、真犯人も明示されますが、登場人物の心のひだを読み解くことは読者にゆだねられています。
その意味において、二読三読に耐えられる作品だと思います。

英国ミステリの香気が漂うが、パズラーとしては弱いか ★★★☆☆
帯に「クリスティも絶賛のパズラー」とある。舞台はイギリスの二流大学で、主人公は天才数学者デズモンドを父に持つ数学講師ピーター。ピーターは天才の父と独占欲の強い母のため気弱な性格で、能力も見劣りする。恋人のルシールは正反対に能力も高く、性格も強い経済学講師。デズモンドは8年前、ヴェラと言う堕胎した女子学生との醜聞の噂が元で狂死する。そして、ピーターは横領容疑で免職の危機にある年長の講師ハクストンに助力を乞われる。だが審問の場でハクストンは、教授達に「8年前の真相をバラす」と仄めかした後で変死する。事務員のカレンはピーターのかつての恋人で、ルシールと同居している。カレンは8年前の調査資料を自宅に持ち帰った直後、何者かに襲われる。次いで図書館で学生ケネスが殺される。大学を舞台にしているためか、これだけでは説明出来ない程、登場人物とその関係は多彩。

ここまでは静かな進行。主人公の性格の弱さも含め、「ウォリス家の殺人」同様、作者の作風らしい。パズラーに徹しているとも言えるし、アクが無さ過ぎるとも言える。だが、ルシールがヴェラの妹だった事が判明し、しかも、ルシールとケネスは姻戚関係にあった事から、一転ルシールは容疑者の筆頭に。ピーターとカレンの努力もあってルシールの容疑は一応晴れるが...。そして、カレンが事務局として奮闘する次期名誉学長就任会宛に脅迫状が届く。そこには、8年前の関係者が揃う。ここまで来ると、問題はヴェラの相手が誰だったかに収斂するだろう。デズモンドか、それ以外の人物か ?

結末で明かされる真犯人は拍子抜けする程予想通り。途中で不自然なシーンがあるし、強力なミス・リードも無いので、必然的とも思える結果。だが、奇を衒わず、英国ミステリの香気を感じさせる作品で、一読の価値はあると思う。
厳しい玄人ミステリー通をも大満足させる人間の光と闇の領域に踏み込む稀な傑作です。 ★★★★★
大学の事務職員の傍ら1960年代から亡くなられる1980年までに秀作13作を発表して活躍された英国本格ミステリー界の職人作家ディヴァインの創元推理文庫初登場となる巧緻な第5作です。本書は読み始めると、大学を舞台に恋する2組の男女が過去に端を発する謎に挑んで行き、幸せなゴールに向かって突き進む学園恋愛ミステリーと言えそうな雰囲気ですが、実は著者は後半に一筋縄では行かない恐るべき企みを用意しています。
ハードゲート大学の数学講師ピーターは、亡父の友人ハクストン教授から自分が横領容疑で免職の危機にあると相談される。しかしハクストンは審問の場で教授達に奇妙な脅迫の言葉を吐いた後自宅で変死してしまう。その後、ピーターの婚約者ルシールの暮らす家に泥棒が入り同居する事務局員カレンが襲われる事件、深夜の図書館で学生が殺される事件、名誉学長の暗殺を予告する手紙、と大学を震撼させる出来事が次々に起こる。やがて、事件にはピーターの父を死に追い込むきっかけとなった八年前の女子学生の死を巡る醜聞が関係する事が明らかになる。
著者は緊迫して行く事件を追いながら、全く違うタイプの男女2組の恋愛模様を描いて恐怖に怯える気分を和らげています。父ほど優秀でないピーターは完璧で冷たく傲慢な大学講師の婚約者ルシールに反発しながらもつきあい続け将来尻に敷かれそうな気配が濃厚です。一方、数年前妻を事故で失った38歳の法学部長ラウドンは10歳年下の事務局員カレンに惹かれ遠慮がちに純情な恋を育んで行きます。この四人の視点による推理が交互に記され、頼りにならない地元警察を尻目に誰が一番に真相に到達するのかが焦点ですが、遂に明かされた真実は予想を遥かに超える非常におぞましくショッキングな内容でした。本書は厳しい玄人ミステリー通の方も完全に満足させる出来栄えで、人間の光と闇の領域に踏み込む稀な傑作ですので、ぜひ一読をお奨めします。