知恵の宝庫『荘子』
★★★☆☆
『荘子』は古くから東アジアに多大な思想的影響を与えてきた書物である。日本でも吉田兼好や芭蕉をはじめとして『荘子』を座右の書とした文化人は少なくなかった。そのように有名な『荘子』には、古今東西多くの人によって解釈・解説が加えられてきている。本書もそれら同様、有名なエピソードの紹介や語句解説、および「達人」「生と死」といったテーマ別分析などが中心となった読み物となっているが、なかでも「斉物論」の理論的解明にはとくに力が注がれている。『荘子』という書物が、思想的・宗教的のみならず論理学的にも、汲めども尽きない知恵の宝庫であることを改めて教えられる。