要するにこの本に書かれていることは、ジャンヌダルクではなく、
中性に存在した超異端の女性達の社会的立場や功績、人生などを
書き綴っているものである。
タイトルに、異議アリ。
ジャンヌ・ダルクは神の声を聞き、神の命令に従って王太子のシャルルを戴冠させ、男装してイギリス軍と戦っているところを捕らわれ、魔女として処刑された。しかし、死後に裁判は取り消され、20世紀に至ってフランスの守護聖女として「聖女伝」に名を連ねることとなった。本書では、ジャンヌ・ダルクの波乱に満ちた生涯を中心テーマとしてすえつつ、関連する幾つかの問題が検討されている。第一に、「神の声」とは何なのか。彼女だけが「神の声」を聞いたのかという問題である。何人かの女性が取り上げられている。第二は、中世における魔女裁判についてであり、「魔女」とされることにはどのような意味があるのか、なぜ「火刑」なのかが説明されている。第三は、なぜジャンヌ・ダルクが魔女とされなければならなかったのかの点である。これは、中世において女性が「男装」することにどんな意味があるのかという問題に関わる。第四は「聖女」についてであり、どのような人物が「聖女」として列伝されているのかの説明がある。
本書のクライマックスは、裁判におけるジャンヌ・ダルクと審問官のやりとりである。彼女の最期の瞬間である。気高く純粋な少女の悲劇的な結末の意味は、今なお考慮するに値する重要な問題である。
本書は、内容が十分に整理されておらず項目の立て方が乱暴である。また表現に配慮が足りず難解と感じる箇所分が少なからずある。そうした難点はあるが、総じて良書と評して差し支えないと思う。