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史実を歩く (文春文庫)

価格: ¥7,003
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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ある意味、氏の史実の一冊。 ★★★★★
 吉村昭の作品のほとんどを読了した身としては、あの小説の裏側にそんな事実や偶然があったのかと、驚きもし、感心もしながら読み返した。読み返したというのも、本書が店頭に並んですぐに手にしているが、書棚の奥に据えたままだったのを、他の本を取り出すときに出てきたからだ。一度は読んでいるのだが、読み返すと、また、新たな発見があるのがおもしろい。
 薩英戦争の発端となった生麦事件を描いた作品では、大名行列を無事にやり過ごしたアメリカ人の陰にアメリカ彦蔵ことジョセフ・ヒコがいるが、この漂流民だったアメリカ彦蔵は氏の好奇心の対象となり、作品化されている。ひとつの事象から、次から次にと不思議なこと、疑問が湧いてきて、ついつい、それが次の作品へと変わっていったのだと思う。
 とは言いながら、氏にも調べきれないこともあり、書き出しに失敗した作品もありと、作家にとって表に出したくはない氏の史実を述べられているところに、後輩諸氏に対するアドバイスなのかなと思いながら、再読した。
 果たして、存命であれば、氏は今頃、何を書いておられるのだろうかと思いながら、史実を歩いて書いた氏の、まさにこれは足跡とでもいうべき一冊と思えた。
誠実な、職人ような仕事ぶり ★★★★★
吉村氏がこれまで小説の取材を行ってきた際のこぼれ話を集めたものです。いくつかのエピソードが心に残るとともに、氏の小説、ひいては歴史というものに向き合う真摯さが伝わってきます。

高野長英はその逃亡生活を終え(処刑)、それと期をひとつにするように、12歳の娘は遊郭に売られてしまいます。彼女は火災で亡くなりますが、そのお墓を氏は探索、しかしあては獏とし見つかりません。桜田門外ノ変で井伊直弼を討った17人のうち、水戸藩士2人は生き残り、天寿を全うしています。(水戸藩士リーダー格の関が捕らわれるまでの逃亡跡を追った調査も心に残ります。なお、氏の井伊大老に対する評価は世間のものからは相対的に高くこの点も興味深い)。また、刑務所の取材で出会う、引退後も服役者のことは例え家族にも言外しません、と言った老刑務官の凛とした姿も心象に残ります。

あくまで具体的に、丹念に取材を重ね、そこで得られた事実を作家の目を通して印象的に仕上げていく、誠実な職人のような仕事ぶりが目に浮かぶようです。
偉大な歴史小説の背景をのぞく ★★★★★
 緻密で重厚な描写で知られる吉昭氏の作品群であるが、そこには当然、膨大な資料調査があった。吉村氏は、江戸時代のある日時のある地方の天気も調べるという。
 その創作活動の中のエッセイが本書である。真摯な態度、緻密な調査には頭が下がる思いである。本書を読んでからだと、吉村氏の名作の数々もより一層、深く味わうことができる。
吉村史伝の舞台裏 ★★★★☆
歴史小説の名作を数々生み出した吉村昭氏が、資料探索の苦労や面白さ、秘められたエピソード、失敗談など、いわば作品の余滴ないしは余禄ともいうべき「副産物」をエッセーに託して語ったもの。各エッセーはそれぞれ個別の作品と対応関係にあり、採り上げられた作品を読んだ後に本書の対応部分を読むと作品理解が一層深まるはず。個人的には、かつて一読して感銘を受けた『生麦事件』のいわば「現場検証」プロセスを書き記した「生麦事件の調査」が印象に残った。(真犯人は誰か、検事も顔負けの捜査能力!)吉村作品を深く味わうための好適の一書としてお薦めしたい。
吉村史伝の舞台裏 ★★★★☆
歴史小説の名作を数々生み出した吉村昭氏が、資料探索の苦労や面白さ、秘められたエピソード、失敗談など、いわば作品の余滴ないしは余禄ともいうべき「副産物」をエッセーに託して語ったもの。各エッセーはそれぞれ個別の作品と対応関係にあり、採り上げられた作品を読んだ後に本書の対応部分を読むと作品理解が一層深まるはず。個人的には、かつて一読して感銘を受けた『生麦事件』のいわば「現場検証」プロセスを書き記した「生麦事件の調査」が印象に残った。(真犯人は誰か、検事も顔負けの捜査能力!)吉村作品を深く味わうための好適の一書としてお薦めしたい。