作品の中では他にもいろいろな人が登場します。それぞれが、「こんな人身近にいるな」「あの人に似てるな」と思えるような人ばかりです。自分をいかに有能に見せるかだけしか考えていない人。お調子者の人。思わず笑ってしまうシーンがたくさんあります。
月日は過ぎ、ピップはある人の好意で遺産を得てロンドンに行くことになりました。いつもピップのよき理解者であり成長を見守ってくれた優しいジョーのことを、ピップは次第に忘れていくようになります。ジョーはピップのことを忘れないのに・・・。
人が人に対し感じる愛情、友情、恩、虚栄心、恨み、そういったもの全てがこの1冊に入っています。この作品に出会って、ディケンズが何故時を超え人々に愛され続けるのかがわかりました。イギリス産業革命後の急速な社会・価値観の変化の中で書かれたこの作品。21世紀の今読んでも全然色あせていません。本当に偉い人とはどんな人のことなのか?それについて考えさせられる作品です。最後まで読み終わったときは深い感動に包まれました。もっと若いうちにこの本に出会っていたら良かったなぁと思います。
ピップ少年を取り巻く多彩な人物の描写、そのユーモアに満ちた筆致にニヤリ。愛ゆえに泣くピップのいじらしさにホロリ。悪を極めた男たちとそれを助長する社会の矛盾にガックリ。というわけで、どこを切っても面白い小説です。
ただし、TOEIC530レベルの私には難しい単語が多かったので、読むのに半年ぐらいかかってしまいました。当時の風俗などを説明した注釈がありますので、翻訳を読んだときにくらべてその点はわかりやすかったです。
付録として、初めて出版されたときのラストシーンがついており、お買い得ですよ。(これは不評だったのでディケンズが変更したのだそうです)