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さよなら、愛しい人

価格: ¥1,836
カテゴリ: 単行本
ブランド: 早川書房
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赤毛 VS 金髪 ★★★★★
 赤毛的な古き良き世界と、染められた金髪の世界との葛藤の物語。
 アメリカ男性の理想の女性像は昔、赤毛だったそうだ。それが金髪にとって代わられた。ハメットの書く悪女は赤毛。大衆ハードボイルドのスピレインは金髪。この本が書かれたのは、世代交代の時期だったのかも。
 あるいは偽金髪だって、赤毛の田舎者であり続けたかったろう。でも都会で生きるには自分を偽らねばならなかった。彼女の歌う感傷的な失恋の唄は、赤毛的な世界に向けられてたのかもしれない。巨漢の元夫、父親代わりの現在の夫、そして本来の自分の属する世界に。
 清水訳で読んだときは、DVを感傷で正当化する話としか思えなかった。俺もそれなりに歳くったのかな。
意表をつく真相・男女の哀切な愛情が胸に響くハードボイルドの古典的名作 ★★★★☆
村上春樹が『ロング・グッドバイ』に続いて新訳に挑戦した、レイモンド・チャンドラーによる1940年発表の、私立探偵フィリップ・マーロウの物語。これも私は初読なので、清水俊二の翻訳による『さらば愛しき女よ』との比較ではなく、作品自体の感想になる。

8年間の服役を終え、消えた恋人を捜してLAの街をさまよう前科者ムース・マロイ。彼と出会ったことでマーロウは奇妙な事件の渦中に巻き込まれる。
『ロング・グッドバイ』の時もそうであったが、次に舞い込む依頼や出会う人々、遭遇する殺人事件、またマーロウが痛めつけられるわけは、一見本筋とは無関係に思われるのだが、読み進んでいくうちにそれぞれにつながりがあることが分かる。

本書では肝心のマロイが表に登場するのは巻頭と巻末だけにすぎないが、彼の存在感と、捜し求める恋人ヴェルマが、物語の最後まで影のようにつきまとうのだ。そして意表をつく真相。読者は一体いつの間にマーロウはそこに辿りついたのか煙に巻かれるようだ。物語の終末で、アン・リオーダンがマーロウに言う言葉はまさに的を射ている。

「どこまでも勇敢で、強情で、ほんの僅かな報酬のために身を粉にして働く。みんながよってたかってあなたの頭をぶちのめし、首を絞め、顎に一発食らわせ、身体を麻薬漬けにする。それでもあなたはボールを離すことなく前に前にと敵陣を攻め立て、最後には相手が根負けしてしまう」

ともすれば本書は、村上春樹が訳したということがクローズアップされがちだが、上述のマーロウの姿や意外な真相・男女の哀切な愛情に心を揺さぶられる、<チャンドラー・ハードボイルド>の古典的名作である。

「大鹿マロイ」と「ムース・マロイ」 ★★★★☆
 村上春樹が「The Long Goodbye」に続いて「Farewell, My Lovely」を翻訳した。熱烈なチャンドラーファンの私も早速読んだ。日本人のほとんどのチャンドラーファンは英語に堪能な人を除けば、清水俊二の翻訳を通じてその作品に親しんでいると思う。私も例外ではない。つまりこの村上訳も清水訳と比較される運命にある。結論から言うと村上訳は清水訳に惜敗である。

 まずタイトルの「Farewell, My Lovely」を「さらば愛しき女よ」とした清水訳は、ちょっとマヌケな村上訳のタイトルを見るに及んで、さりげないが凄いセンスであることが今になってよく分かった。そして「moose」という語はどの英和辞典でも「へらじか」としか訳語がついていない。米国ではデカくてタフな男に「moose」というあだ名をつけるのはフツーのことらしいのだが、わが国にはいない生き物なので、馴染みがない。だから「moose malloy」に「へらじかマロイ」と訳語を当てても、ただマヌケなだけだが、これをあへて「大鹿マロイ」とした清水訳はあっぱれとしか言いやうがない。これを拝借するわけにはいかない村上訳は、苦肉の策で「ムース・マロイ」となるのだが、これもなんだか力が入らない名前だ。

 これら二つの訳語のセンスだけでも清水訳の勝ち。そして文体も、キビキビした正統派ハードボイルド調の清水訳に対して、村上訳はややユルイかな。プロの翻訳家とそうでないひとの差は、実は歴然たるものがある。さらに重箱のスミを突っつかせてもらうと、第35章305pで、ブルーネットに会うためにボートに乗り込む件で「麻でできた緩衝物に云々」という文章がある。この緩衝物を船舶用語では「防舷物」と呼称するはずであるが、こんな言葉も知らずして・・・と、やや絶句。因みに清水訳ではこの部分は省略されている(笑)。

 とは言え、村上氏はあとがきで「チャンドラーのある人生と、ない人生では確実にいろんなものごとが変わってくるはずだ」と述べているがこれは的を得た指摘であろう。清水訳を読みつくしているチャンドラーファンは、この当代一流の人気作家がいかにチャンドラーを料理したのかを、味わってみる価値は本書には十分にあると思う。
やっぱり名作だけど ★★★★★
『さらば愛しき人よ』を村上春樹が新たに訳したら、題名まで変わってしまった。
訳はともかく、題名は前の方がよかった思う。
マーロウより自分が年上になるとは思わなかったけど、この小説のマーロウはすごく若く感じる。アン・リオーダンに対する彼の態度もなんだか大人げない。でも、やっぱり名作。次は何かしら?
会社勤めか、それとも一匹狼か ★★★★☆
ボコボコにのされたあと主人公は「気分爽快とまではいかずとも、予想していたほどひどくもない。会社勤めをするのに比べたら数段ましな気分だ」とつぶやきます。そこには著者自身のにがい過去の思い出も含まれているのでしょう。今の日本人は、この小説に描かれるような世界よりもむしろ会社勤めをがまんする方を選んでいます。訳者である村上春樹の世界観はこの両者の間のどのあたりにあるのでしょう。