本作がそのタイトルにふさわしいかどうか議論を始めたらきりがない。『Dirty Mind』からのナンバーもなければ、初期の『Controversy』は跡形もなく、「Erotic City」もないし、シングルカットされなかったナンバーは1曲もない。シングル・ヴァージョンの数曲は省かれ、嘆かわしくも廃盤になった『Gold Experience』は無視されている。
   けれども、1979年から1992年までの主要なシングルA面曲17曲が並んだこのベスト盤は、プリンスが、R.E.M.のギタリスト、ピーター・バックいわく「世界で10本の指に入る奇妙なミュージシャン」だった時代をざっと振り返らせてくれる。プリンスは独創的な技に恵まれ、あらゆるリスナーに伝えたいと願い、セックス狂いの「Little Red Corvette」から隠れた精神性をのぞかせる「Purple Rain」までロックとソウルのスタイルを復活させた。また、しばしば、楽曲に取り組むのと同じ姿勢で歌詞をわざとぼかした。新約聖書をイメージした「Thieves in the Temple」は、奪われたガールフレンドに文句をつけている。
   本作はパーティーにはもってこいのアルバムだが、マニアでない多くのファンでさえも収録曲が少なすぎると思うことだろう。（Rickey Wright, Amazon.co.uk）