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倒錯の舞踏 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

価格: ¥7
カテゴリ: 文庫
ブランド: 二見書房
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ミック・バルーが好き ★★★★☆
MWA・PWAの両賞を受賞したハードボイルドの秀作との評価に惹かれ、
触手が伸びました。

性倒錯者の殺人ビデオテープから犯人の正体を暴いていくプロセスや筋立てよりも、
血と暴力の国の邪悪なるものに自ら鉄槌を下す探偵マット・スカダーのけれんみの
無さが魅力です。

社会が混沌としており、事件が異常の度を増すほどに主人公スカダー対比されます。
アルコール依存症だった元警官。現在は克服しつつAA(我が国でいえば“断酒会”)
にあしげく通っている。
つまりスカダーは事件を取り巻く社会全体に、酔っていない“シラフ”であることを
著者ローレンス・ブロックは伝えたかったのでしょうか。
酒を断ち、よりタフに、自らダークな<罪>と対峙するスカダー ★★★★☆
ローレンス・ブロックの、アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’92年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作。本書は無免許の探偵<マット・スカダー>シリーズの9作目に当たり、日本では’93年、「このミステリーがすごい!」海外編第6位にランクインしている。

あるケーブルTVのプロデューサー夫妻が強盗に襲われ、妻が殺された。彼女の兄が、夫の仕業に違いないので調べてくれ、とスカダーに依頼してきた。一方、半年前、AA(アルコール中毒者自主治療協会)の仲間から、マスクをした男女が少年をいたぶって殺すシーンが映っていたビデオを借りてしまったので観てくれと言われていた。件の妻殺しの調査中に、その時のビデオに出演していた男を偶然目撃したことから物語は始まる。

個人的には<スカダー>シリーズを読んだのは、『八百万の死にざま』に次いで2作目だが、本書では、相変わらずAAの集会に参加してはいるが、すっかり酒を断ち、内面の苦悩を、酒のかわりに恋人やその他の彼を取り巻く味のある登場人物たちによって映し出し吸収してもらっているスカダーを読み取ることができる。

今回スカダーは常人の道徳観念を持たない変質的な殺人鬼と対決するのだが、法によって裁くことのできない<罪>に、自らダークに<罰>を与えようとする。

本書は、異常な犯罪が多発するニューヨークという“汚れた”大都会に生きて、虚無感や深い陰影を抱えながらも、それでもタフに“仕事”をこなすスカダーの姿を描いた逸品である。
狂気 ★★★★☆
 マット・スカダーは、AA(アルコール自主治療協会)のメンバーから一本のビデオ・テープを渡される。それは彼がレンタルビデオ店から借りた映画のビデオだったが、そのテープには驚くべき事にスナッフ・ポルノがダビングされていたのだった。スカダーはその残虐な殺人シーンに映っていたラバー・マスクの男女の内の男に似た風貌の人物をプロボクシング会場の観客席で見かけた様な気がした。その時の男は少年と二人連れだった。今度はその少年が殺されるかもしれないと思ったスカダーは、警察の似顔絵描きレイ・ガリンデスに頼んで自分の目撃した男と少年の似顔絵を描いてもらい、それをコピーして街で聞き込みに歩き始める。
 
 前作「墓場への切符」で狂気の男と対決する羽目になったスカダーだったが、今作もそれを上回る狂気の敵が出現する。それも性倒錯の殺人狂の夫婦というからタチが悪い。悪者に罰を与えるという事は一体どういう意味があるのか?それも殺人という形で。重たいテーマであるがそれを一級のエンターテイメント小説として表現してしまう作者ブロックの力量が凄い。
”新”シリーズのハード・スカダー ★★★★☆
スカダーが結婚し、ライセンスを取ったあたりから”新”シリーズかと思っている。セカンド・ステージとでも言おうか。

さて、今回の事件は、奇怪な二つの事件が収斂して行き、驚くべき結末に行き着く。複数の事件が一つになっていく手法はブロックお得意だが、次第に行動的になってきたスカダーを見ていると、何だか”スペンサー・シリーズ”をちょっと思い出して可笑しい。昔はもう少ししっとりした話が多かったものだが。
ともあれ、スカダーやいつものメンバー、そして今回初登場の人物は相変わらず素晴らしくよく描かれている。話のまとまりも見事。ファンとしては、珍しい”ハード・スカダー”を暖かく見守ろう。
ゆるされざる者 ★★★★☆
なかなか偶然は体験したことがない。妹の死に疑問をもち、妹の夫の捜査の依頼があり、それとは別にAA集会(私は酒飲み達の集会と読んでいる)の参加者から一本のビデオテープに映ったSM殺人。スカダーがボクシング会場でなんとなく気になる親子風のおっさんと少年。それぞれが繋がっていくアンダーグラウンドの世界。現実にもあるのだろうか。最後は友人のミックとスカダーさんがこれでもかと決着つけてくれる。ほんとにこんな趣味があるのかどうか。現実でも訳のわからん事件があるからね。以前の作品でヒモしていたチャンスがアフリカの仮面美術売買で成功しているし、新しい登場人物TJが出てきて役に立つし、美人で知的なエレンとよりいいなかになるし。でもね、スカダーさん、少しコーヒーにバーボンを入れてもいいよ。読者は許可しますよ。酔っ払いでなくなっても気になるスカダーおじさんです。