スカダーシリーズ16作目
★★★★☆
30年続いているMatt Scudderシリーズ最新作。
無実を訴える処刑直前の死刑囚のもとを訪れる謎の男。彼は徐々にその悪魔のような正体を現し始める。
Elaineの友人のMonicaが惨殺される。彼の目的はMonicaだったのか?それとも?
この作品は前作「Hope to Die」の続編。私は途中で「Hope to Die」を読み直すはめになった。まず前作を思い出してから、読み始めることを勧めます。
この作品からScudderシリーズを読み始める人がいるかどうかわからないが、そういう人にこの作品がどのような魅力があるのかはっきりいってよくわからない。最初から読み続けている私としては、登場人物たちとともに年を重ねてきているので、作品の大筋以外のところでいろいろな意味を感じるエピソードが随所に織り込まれているのを感じ、またその意味するものは大きい。
長年、Scudderと友人関係だった警察官のJoe Durkinの引退もその1つ。あらためて歳月を感じてショックだった。
家庭と家族を捨て、アル中で、人生を投げてしまいそうだった悩み多かったScudder。その後禁酒をして、酒を飲まない主人公がハードボイルドで存在し得るのかというような論議も交わされたこともあった。この30年間で、彼も、作者も、そして私も歳をとったとあらためて実感した。彼は現在は65歳で、Elaineと財政的にも心配のない平穏な生活を送っている。誰がScudderがElaineと結婚という形で結ばれ、二人でモーツアルトのコンサートを楽しむことになると思っていただろうか。結局、2人とも良い歳のとり方をしたのだと思う。
読み終えて、この作品がこのシリーズの最終作品ではないか?といつになく大きな不安をおぼえた。もしそうなら悲しいが、もうScudderも無理はできないということだろうな。
もう一度第1作目から読み直そうと思った。若き日の彼と自分を思い出すために。