暗号やトリックに、立体的・図形的なものが多く、
見取り図があってなお、理解するのに時間を要するものも
あったけれど、なかなか論理的で、美しい解決であったのでは
ないかと思います。(少なくとも正典に比べて格段に)
幼い頃から正典に親しんだ、人にはなんだか羨ましい世界なのでは?
正典の世界そのままの舞台で、難解な暗号に挑むなど、
蟲惑的過ぎてクラクラする。殺人事件や謎よりも、ついついソチラに
心惹かれてしまうのはシャーロキアンの悲しいサガかもしれない。
それらの謎が、結末に至って一気に、まさに怒涛のような勢いで明らかになっていく様子は小気味よささえ感じられる。驚異の、とか大仕掛けの、とかいう言葉があてはまるミステリーだと思う。逆にいえば、島田荘司系の作品が好きではない人(いるのかどうか知らないが)には「こんなのあり?」と思われるかも。