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プリズム (創元推理文庫)

価格: ¥735
カテゴリ: 文庫
ブランド: 東京創元社
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彼らは何のために推理する? ★★★☆☆
 小学校の美人教師が、他殺と思える状況で変死。教え子、同僚教師、元恋人、不倫相手と、彼女の周囲にいた人物たちが、「真相」を推理していく趣向のミステリー。一見、合理的と思えた推理が次々に崩壊し、被害者の新たな一面が明らかになるにつれて、事件の様相も変化していく。

 最終的な推理を読者に委ねてしまうという、面白い趣向のミステリーだと思うし、それなりによくできている部分も多いのだが、結果的にはあまり成功していないように思う。
 理由はいろいろあるが、最後に登場する不倫相手の推理に無理がある(衝撃的な結論に至っている割にはあまりに根拠が弱い)ことと、四者四様の推理を展開する語り手自身が犯人だという可能性も否定できないことだろう。

 語り手が犯人かもしれない、というのは作者として想定内とも言えるだろうが、もしそうなら、語り手は「自分以外の容疑者を探すフリ」をしていることになり、彼らは何のために推理しているのかわからなくなる(自分への疑いを逸らすためではないのは明らか)。そのあたり、作者自身が「推理ゲーム」の幅を狭めているような気がするんだけどね…。
結末が複数存在する小説の存在を認めるか? ★★★★☆
一人称の語り手4人が、4つの章ごとに小学校女教師の死について真相を探ってゆく。
章が進むごとに、新たな事実がひとつひとつ明らかになり、教師の死についての別の仮説が浮かび上がっては消える。
そして、最後の4つ目の章の結末で、最初の第1章で暗黙の前提となっていた語り手の潔白性が否定され、4人の語り手の誰かが嘘を語っているのでなければ結局どこにも犯人はいないことになってしまう。

事実を小出しに示してゆき、真相に迫るスリルを徐々に高めてゆく展開は、ミステリ小説として非常に面白い。一気に読み切れる。

それでも、見かけ上、犯人の存在しない殺人事件、というあいまいな結末は残る。異なった人間の視点により、事実は全く異なった様相を見せる。そんな真実を極限まで追求したスタイルのミステリだと言われれば、そうかも知れないが、それでも読後感はすっきりしない。

つまり、結末がひとつに決まらないのも、小説の終わり方の一つだ、という事実を受け入れるべきなのか。
どうしてもそれが受け入れられなければ、本作はエンターテイメントに徹した小説ではなくて、実験小説と考えるしかない。
灯るべきはずでないものが灯り、そして消え ★★☆☆☆
被害者を巡る人物がそれぞれ探偵となり、仮説・検証を経ていちよの着地点に各々が辿り着く。まさに多面体な一冊。構成美は確かに見事と
評したいが、よくよく本質的に観察するとそもそもの立脚点が不遜であり、表現の前に作者がミステリに何を求めているかが甚だ不明に感じる。
寧ろ度外視すべき部分に非常な拘りをみせ、なまじ体系立てる技巧があるだけ余計に小賢しい印象が拭えない。
この作家像・作風にこのタイトル...皮肉としか思えない。。
多重解決+α ★★★★☆

一つの事件に対し、複数の“真相”が導き出される
『毒入りチョコレート事件』の形式が踏襲された作品。

作中では、四人の語り手がそれぞれ最終的に到達する
“真相”も含め、合計十通りの仮説が構築されています。

さらに本作には、そうした本家から受け継いだ《多重解決》の趣向に加え、
もう一つ、作者独自の趣向が採り入れられています(各章の章題に注目)。

作者は、その趣向によって本作を一個の“プリズム”とすることに成功したといえます。


ところで、本作の四人の語り手は、事件について調査・推理しますが、それは自分を
納得させる口実を見出す作業にすぎず、真実を追究することとイコールではありません。


もっとも、そもそも真実などというもの自体が、人と人のあいだに
あえかに現出しては消えていく、幻影にすぎないとも言えますが。




小説好きな著者のテクニックご披露 ★★☆☆☆
美貌の女性教師殺人事件を巡る、四者四様のアプローチと推理。

巻末解説や他の方のレビューによると、往年の名作推理小説へのオマージュらしいが、
恥ずかしながら、それらの作品を未読の私。
そんな私からすると、そういった「書く側のテクニック」はなるほど素晴らしいのかも知れないが、
「一人の人間の多面性をプリズムに喩えてるんだね。ふーん」くらいのものだった。
ハラハラドキドキするようなストーリー展開や登場人物の人間的魅力といったものを求める
私のような者には、合わないようだ。