連続して起こる数百万の身代金の誘拐事件。そして“仕事人”たちのメンバーである托鉢僧・武藤を身代金受け渡し人に指定しての誘拐事件は、子供の殺害と身代金の焼却という最悪の結果に終わった。前者の事件には、自らの存在を隠して全てを操る<ジーニアス>の存在が…。
ネット時代の誘拐とはいかなるものか、徹底して考えられた計画が素晴らしい。
<ジーニアス>の描き方もなかなか巧いです。
<ジーニアス>を追いつめるために仕事人のボス・環がとった方法など、読後感は単純に爽快とは言い難いです。
とはいえ、最後には“仕事人”が勝つというのはお約束かもしれませんが、救いといえるでしょう。
本格ミステリのエッセンスと小説の面白さが結実したエンターテインメント・サスペンスとでも言えるでしょうか。
で、この作品ではインターネットを使った誘拐事件というものだが、97年に雑誌連載が始まった作品で、いち早くネットの匿名世界の危険性、HPを作るものの心情などが描かれたもののように思う。現在と、ネットを取り巻く環境が異なってきた部分が大きいわけだが、それでも同じネットを利用する者として共感できる部分があり、そういう点でも楽しめた。