アルバム全体を活気づけるのは熱いリズムだ。ディストレーションの効いた爆音ギターとブラック・フランシスのシュールな絶叫の向こうから、かすかにではあるが、キム・ディールのベースが聴こえてくる。彼の生み出す心地よいハーモニーと力強いリズムが、アルバムに統一感を与えているのだ。歌詞に目を向けると、ブラック・フランシスの妄想癖は相変わらずで、「Motorway To Roswell」では異星人に、「Distance Equals Rate Times Time」では身の回りに目が向けられている。また、ジーザス&メリー・チェインの「Head On」のカバーも見事。
『Surfer Rosa』や『Doolittle』ほど取っ付きやすくはないが、『Trompe Le Monde』は、ピクシーズのスタジオ・アルバム中、どれと比べても遜色(そんしょ)はない。もっとも強い影響力を持っていたアメリカン・インディーズ・バンドは、まぎれもなくピクシーズだ。だが本作がリリースされて間もなく、ブラック・フランシスはフランク・ブラックと名を変えてソロ活動をスタートさせ、キム・ディールはザ・ブリーダーズで成功を収めたのである。(Robert Burrow, Amazon.co.uk)