作者の眼、感じさせる一冊
★★★★★
若くして難病になりながら、小説家の視点から、批判的な立場を維持しつづける作者の姿が先鋭な文章から浮かび上がってくるように思った。英語と言う言語、南部という場所のもつ力、そしてキリスト教の立場に依拠しながら、同時に何者にも制約されない自由を小説の中に追い求める作者の思想は、「習俗(manners)をとおして秘儀(mystery)を見る」という本書の態度表明に端的に示されている。自らの死を常に意識し続けたであろう筆者の、小説におけるマニフェストとも作品論とも読みうる本書は、物事の表面下にあるものを一瞬のうちに鮮やかにひらめかせる彼女の優れた短編群にいっそうの幅と深みを与えるものだ。また、信念とアイロニーに満ちたエッセイとしても、作者の「見る目」の確かさを感じさせる。ここに収め!られた「ある少女の死」は、特に、作者自身の「死」へのまなざしと重なり合って感慨深い。