地球上から消えた200億テラナーの謎を追え!新局面ローダン・シリーズ第379巻。
★★★★★
‘喉’に呑み込まれ未知の星系で実体化した地球から忽然と消え去った200億テラナーの謎を追うマスクの男アラスカの活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第379巻。本巻の執筆者は長年に渡りシリーズを牽引し続ける大ベテランのフォルツです。ローダンとアラスカがいる故郷銀河でのラール人との戦い、ブルとロワのオヴァロンの惑星での待機、に続いて本巻からマスクの男アラスカが未知星系の地球を舞台に人類消失の謎を追う異色の物語がスタートします。冒頭からいつもと違って極端にスローな展開に戸惑う方も多いだろうと思いますが、SF本来の原点に帰った様な丁寧な背景説明と少ない登場人物それぞれの心理描写のきめ細かさが新鮮で今迄にない新たな魅力を感じました。
『人類なき世界』ウィリアム・フォルツ著:時間の井戸から地球に戻ったアラスカは人の気配が絶えた世界に遭遇し愕然とする。一方、テルムの女帝に仕える研究者ラングルは虚無から突如出現した星系を目撃し中心惑星へ調査に赴く。本編が初登場の研究者ラングルの優しい人間性に触れていっぺんで大好きになりまして、最後に解る知的障害者らしき、ちいさなアルロの不器用な生きざまの物語も胸を打ちました。『テラの孤独者』ウィリアム・フォルツ著:‘喉’転落の4ヶ月後に覚醒した男2人女1人の3人のテラナーが互いを発見し、やがてアラスカやラングルとも邂逅する。本編では極度の不安がテラナーを暴発させてしまい皆殺しの危険性をも孕む張り詰めた緊迫のドラマに心震えます。
本巻の翻訳者、赤坂桃子氏のあとがきは文化の違いによる相互理解の困難さについて要領良く一頁の短文にまとめられています。本書のカバー・イラストに研究者ラングルと計算脳ロジコルが描かれていないのが残念で、恐らくイメージを掴むのが難しかった為だろうと思いますが、好感度抜群の重要なキャラなので何とか次回に期待したいです。
人類なき地球でアイディンティティを求める5名が集う
★★★★☆
<375>巻 成就の計画でテラ標準時3581年9月2日にメールストロームの喉に墜落し、コンタクトを絶った地球が再び、紙上へ。373巻で闇のスペシャリストに続いて入ったブラックホールから、殲滅スーツに導かれ時間の井戸を経由し、アラスカ・シェーデレーアが行き着いたところは、人類なき地球。3582年1月4日、地球では、再び生命が動き出す。
アイディンティティに悩む、テルムの女帝に使える研究者ラングルと、人と異なることで悩み孤独を感じるアラスカ・シェーデレーア、そしてごく普通のこれまで愛を知らずにきた人類3名が出会うとき、どうなるか?今回は、もしも地球に3名しかいなかったら?異星人に出会ったら?そんな質問を問いかける。
今回の物語は、現在の孤独な人類を象徴している。これまでも、ローダンシリーズは、現代社会を象徴するようなもの匂わせていた。純粋理性を志すアフィリーも、資本主義社会の合理主義を象徴していた気がする。ローダンシリーズは、大衆SFとはいえ、現在の思想や世相をモディファイしながら、正義の理想論の中に、未来を、神を、永遠を物語る。