読んでると頭から湯気が立つほど熱くて濃ユイ
★★★★☆
戦争映画を見て戦争ごっこにハマった小学生が、映画を観つづけることでアカの他人に共感する力を鍛えられ、共感する力を鍛えられることによってますます映画を観るのが面白くなり、映画監督を志す。志を立ててからも何度か挫折を繰り返すが、そんなときにも自分を励ましてくれる頼もしい映画、背中を押してくれる楽しい映画に出会い、ついに映画をつくる側にまわる――そんな個人史エッセイに読めた。若き日の著者は、スクリーンの登場人物やストーリー展開やその描き方に強烈に共鳴し、そこに自分を重ね合わせて感情移入する。そもそも人は、そうやって心を動かして何かを発見したいから本を読んだり映画を見たりするんだなあ、とあらためて気づかせられ、60~70年代のアメリカ映画をあんまり知らないのにじっくり読んだ。熱くて濃い文章ながらもクールな観察や皮肉のスパイスも利いていて、おお!あの映画監督はこうやって言葉で世界を噛み分けていたのか、と興味深かった。