著者は、大錬金術師などと言われていますが、本書の内容は、「大聖堂等の装飾が伝えている、隠されたメッセージとは、なにか」ということで、通説のほうがこじつけ、と思われるような説明も散見できます。文学史上でも、この本の影響は大きいそうで、妄想その他のたぐいのではないと思います。
私は、オカルティズムにしめる本書の位置の大きさから、難解な文章を予想していたのですが、とても読みやすく、また、写真等も適所に挿入されています。弟子(?)の著作(ISBN:4059001481)と比較すれば、おそらく、フルカネリの知識、知恵は、伝授されなかったのだろうかとさえ思えます。すぐに使われる「金字塔」という言葉は、このような書物にこそ使うべきであると思います。
また、訳者によるあとがきは、フルカネリと本書にとって貴重な資料です。
ただ、ガイドブックの代わりに使うことにはお勧めできません。内容のあまりのおもしろさに、大聖堂を立ち去りがたくなり、旅行の計画が大幅に狂うでしょうから...