進歩的段階を迎えていた時期のジョン・レノンが、なぜ本作のような1950年代のロックン・ロール・スタンダード集を発表したのかは分からないが、彼がいい仕事をしたことだけは確かだ。ビートルズがその最良のカバー作品でみなぎらせていたような「クレイジーな若さ」は、この『Rock'N'Roll』(邦題『ロックン・ロール』)にはない。だがレノンは、ノスタルジックな音づくりを得意とするフィル・スペクターをプロデューサーに迎え、若き日のお気に入りの曲の数々にぶつかっていき、ベン・E・キングの「Stand by Me」をはじめとする感動のピークをところどころに築き上げた。
アルバム自体もさることながら、革ジャンを着た十代のレノンのジャケット写真が雰囲気たっぷりで、懐古的な味をうまく出している。まさしくこのアルバムにぴったりと言えるだろう。1970年代のレノンには不可解な面もあるが、本作が示すように、以前とまるで変わらない部分もあったのだ。(Taylor Parkes, Amazon.co.uk)