もちろん、人工的な素材を使って作られた芝生が悪いというわけではないが、ザ・ルーツがつくろうとしているのは風味豊かな繊維食物だ。ラップはベース、ドラム、キーボード、ホーンに絡みつき、楽器類はヴォイスの抑揚に合わせてくねり、やがて本物の「うた」へと育つ。音楽とリリックはあくまで自然な共生関係を築くが、決して偶然の力に頼っているわけではない。ループやサンプルでは不可能なことをザ・ルーツがやってのけるとき、彼らの胸の高鳴りが聞こえてくることだろう。たとえば、「Essaywhuman?!!!??!」でヴォーカルと楽器がかけ合いを演じるところや、「Mellow My Man」が途中で奇妙なインスト演奏へと脱線し、そこにラップという生きた人間の声がかぶさってくるところに注意して頂きたい。
フィラデルフィア出身らしいグルーヴを持つザ・ルーツは、ア・トライブ・コールド・クエストの洗練された東海岸風のライムと、ワイルドな西海岸風のフリースタイルをベースに、見事なアシッド・ジャズを展開する。ジャズのように流動的で型にはまらないサウンドだが、とてもヒップ・ホップには聴こえない。ザ・ルーツの音楽は、解散してしまったL.A.のグループ、フリースタイル・フェローシップの怒りに満ちたスキャットとスリリングなメロディーを受け継いでいる。そして、ジャズとラップの異種交配などという陳腐な売り文句を超え、新たな可能性を示すのだ。この種のゴッタ煮風音楽は大昔に起源(ルーツ)を発するが、どうやらザ・ルーツは新たな夜明けを見せてくれそうだ。(Roni Sarig, Amazon.co.uk)
なおUKのサックス奏者スティーヴ・ウィリアムソンの1994年のアルバムJourney to Truth
にはThe Rootsからクエストラヴ、ブラックソウト、ハブの三人が参加していて特にク
エストラヴはほとんどの曲でドラムを担当しています。The Rootsよりも複雑なリズム
や構成の複雑な曲を軽々こなすクエストラヴが素晴らしく、彼らのファンはもちろんジ
ャズに偏見を持っているようなHIP-HOPファンには是非聴いて欲しいアルバムです。私
がThe Rootsを聴いてHIP-HOPに対する意識が変わったのと同様にジャズに対する認識が
変わると思いますよ。