本物のリアリティを求め続けたロベール・ブレッソンの「抵抗」と並ぶ代表作です。
本物のスリを使ったというシーンは本物ですから見事な緊張感で、
その手さばきは芸術的です。
極端なドラマはありませんがそれゆえのリアルがあるのです。
映画好きならこれと抵抗は一見の価値ありです！！！

　本作はいわゆる「ドロボー映画」であるにもかかわらず

　一攫千金を狙ったり、贅沢三昧にふけるシーンを強調したりしない

　実に堅実な映画となっております。

　（星新一さんの短編「盗賊会社」に近いものを感じました。）

　説教調を抑えたラストシーンも素晴らしかったです。

☆人混みや混雑している場所に紛れ込んで懐=(ポケット)から物=(財布)を隙を見て一瞬の内に盗みとる言語道断?の犯罪行為【スリ】をテーマにした現実味重視の素朴な一篇。そのスリに手を染める人間の心理面と内幕を隙間なく日常的な作風で淡々とお話が進行されるのがこの作品の褒め讃えたい趣向であり、意義のある着目点といえる。手先が器用な事が幸いしてスリ行為を働く人間不信の貧乏学生のミシェル(マルタン・ラサール)が犯行を繰り返しては再生、そして、逮捕される、ミシェルの屈折の人生物語を芸術的でスリリングな犯行手口=(スリ)の描写と彼に目をつける主任警部(ジャン・ペレグリ)との因縁、ミシェルが暮らしているアパートの隣室に住む娘ジャンヌ(マリカ・グリーン)を巡る涙の感動劇、いつの間にか仲間ができて、スリ集団から組織化していく経過を刑務所脱獄映画の名作『抵抗』や偽札が動機となる不運の悲劇『ラルジャン』等を手掛けたフランス映画界の天才監督、ロベール・ブレッソンが簡潔で静寂、寡黙な演出手法で描き見事な効果をあげている。あざやかで制御された映像感覚も優秀。映画の舞台である、パリ市内の由緒ある風景場面も素晴らしいムードを醸成。ロベール・ブレッソン監督の真骨頂にしてスタイルである、無駄を極力、排除した慎重な節約主義の構成と主演者全員が素人という徹底的な本物志向と妥協なき追求主義ぶりには改めて感心させられます。サスペンス・ドラマとしても超A級の面白さ。全編がリアルな緊迫感の連続の稀有な秀作です☆。