本書は非常に特徴的な教科書である。全編において設問を通じてテーマが設定され、記述が進められている点である。これは、本書のもととなった連載が(すくなくとも当初は)入門者を念頭において記述が進められていたことによるのかもしれない。はじめて刑事訴訟法を勉強するひとにも、とっつき易い形式であるし、かつ記述がつねにどのような関心のもとに付されているのかわかって非常によい。教科書一般にありがちな、漂流するように何でここで出てくるのか分からない記述というものがない。ただ、本書の内容・分量は、とても「入門者」だけを念頭においているものとは思えず、むしろ、裁判官などの実務家を含めて無視できないレベルに達しているといってもよい。
すでに刊行されている『刑事訴訟法(1)』(今後装丁が変更されるだろう)、『刑事訴訟法III』、そしてこれから刊行されるであろう『刑事訴訟法IV』とあわせて、刑事訴訟法の道しるべになる一冊である。