ジェームス・ボンドの荒唐無稽な冒険の始まり
★★★★★
原作では第2作目の作品です。第1作の『カジノ・ロワイヤル』はカジノが舞台のどちらかと言えば密室劇的な作品でした。本作からストーリーのスケールが大きくなります。イアン・フレミング、ボンドの本領発揮というところです。そういう意味では画期的な作品です。
舞台はイギリス、ロンドンのMI6のオフィスから始まり、いきなりアメリカ、ニューヨークのハーレムに飛び、クライマックスはカリブ海です。これだけで後の映画のイメージが浮かんできます。
今回の事件はブードゥー教でハーレムを支配するミスター・ビッグ(顔がでかい)がカリブ海で発見された17世紀の実在の海賊ヘンリー・モーガン(ディズニーのカリブの海賊のモデル)の大量の金貨をソ連にせっせと運び込み、ソ連はそれを元手に西側経済の混乱を狙っているというものです。当時はアメリカを中心とした金本位制の時代ですから、大変です。しかも黒人とコミュニストというのは当時のアングロサクソン中心の西側世界の2大脅威です。この2つの脅威をカリブの海賊でつなげちゃうところがイアン・フレミングの才能ですね。