フォレットらしい軽妙で隙の無い展開で物語は進行する。
まとまっているが、主題が見え難く「物語」で終わっている様に思えた。
クローン技術についても、70年代にこういった形で"成功"する事は想定として技術的にかなり無理が有ると感じた。また、「悪者達」がクローンに着想する経緯に飛躍が有り、この辺りの肉付けがしっかりしていれば、もっと迫力有る仕上がりになっていたはずと思う。
英語は大変よみやすく、時間を追ってチャプターが進みます。あれ?これって回想シーン?なんて混乱はありません。
なんの力もない庶民が権力に立ち向かう後半ははらはらどきどき、読書って最高、と楽しめました。
ある男性がレイプの罪で捉えられてしまう。被害者も彼を犯人だと断定する。しかし男は潔白であった。このことがきっかけで女性の大学教師が第二次世界大戦後に行われた「生物実験」の恐ろしさを知る…というプロットだ。プロットは最後までどきどきさせてくれる。サスペンスだけではなくロマンスの要素もふんだんに用意されている。
英語に興味のある人には、Follettの英語は参考になるだろう。あまり難しい単語は使わないが、描写力はしっかりとしている。日本人にとってよいモデルになる質の高い、品を感じさせる文体で書かれている。
プロットの面でも、ことばの面でも、読んで損はない。