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マノン・レスコー (新潮文庫)

価格: ¥515
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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不朽のロマンス ★★★★★
本作はアベ・プレヴォーによる、18世紀フランスを代表する作品のひとつである。
主人公グリュウとその恋人マノンの、幼くも悲しいロマンスを描く。

物語は主に主人公である青年グリュウの回想という形で進行する。
元々おとなしく品行方正な学生だったグリュウと、美しくも享楽的な少女マノン。
対極的な性格の二人は偶然出会ってしまい、その後の人生の歯車を大きく狂わせる。

本作の読みどころは、揺れつつもマノンから離れることができないグリュウの心の揺れ動きである。
グリュウは三度もマノンに裏切られるが、その度に彼女を許してしまう。
マノンにしてみればそもそも悪気など微塵もなく、ただ無邪気で奔放なだけなのだ。
それでもグリュウの心をとらえて離さないマノン。
マノンに対するグリュウの愛は、親を裏切り、親友を欺くほどである。
何故か読み手にしても、そんなマノンが全く憎めない。

特筆すべきはグリュウの親友チベルジュである。
友であるグリュウを心から思い、幾度もグリュウに裏切られるも、決して見捨てることはない。
あきらめずに友を諭し続け、友を救おうと奔走する。
ある意味、本作で最も深い慈愛の持ち主はチベルジュだったのではないだろうか。
本作では欠くことのできない名脇役である。

グリュウは終盤近くで、「どんなことをしてもマノンと別れない、世界の果てまでついていく」と断言する。
そしてクライマックスの舞台となるアメリカで、グリュウはそれを成し遂げる。まさに文字通り成し遂げるのだ。
とても残酷なラストであるが、悲劇としてこれ以上の結末はない。
心に深く残る恋愛小説のひとつとなった。
「パンなしで恋が語れるとお思いになって?」 ★★★★★
「ぼくは空腹なんてこわくなかった。」ー本文より抜粋ー

イキイキとした躍動感あふれる物語が胸に飛びこんでくる。
これで昭和31年の訳だというから、
古さを感じさせない良質な翻訳に少し驚く。

「マノン・レスコー」
耳には聞き知っていたけれど、
こんなに面白いとは知らなかった。

青年の清純な魂が、
恋のために破滅的に堕ちていくほどに、
ますます強い輝きを放っていくのは、なぜだろう?
人間として生きることの切なさを想う。

こんなことを書くのは面映ゆいけれど、
恋とは生命(いのち)を賭けて苦しむことだと
あらためて感じた。

愚かにも美しい恋物語 ★★★★☆
自宅にあった昭和48年発行の紙が茶色くなった新潮文庫で読んだ。
家柄、財力、知性に恵まれた青年グリュウが、マノンと出会い、恋のためにすべてを犠牲にして、罪までも重ねてしまう狂おしい恋物語。しかし、グリュウには、家柄や実家の財力により、必ず自分を支援する人が存在することを疑わない甘えが見え隠れする。実際に、チベルジュという真面目な親友が彼を救い、支え続ける。
200年以上も世界中で読み継がれているのは、このような狂おしい恋をしてみたい男心によるのか。それとも、自らもマノンと化し、男を狂わせたい女の憧れか。
青柳瑞穂の翻訳は、美しい日本語で、しかも平易で読みやすい。
プッチーニ作のオペラもぜひ観てみたい。
悪女に狂うとは ★★★★★
小さな幸せに満足している人が読むにはちょうど良い本です。自分の知らない世界、愛と憎しみと情欲が形となって現れ出ます。どうしてそんな馬鹿で薄情な女にうつつを抜かすのか分からないときちょうど良い導きの書となるでしょう。そして、尽くし抜いて自分が無になっていくときの感覚にいつの間にか共感していきます。
盲目の恋 ★★★☆☆
贅沢な生活ができるなら、恋人を裏切ることも罪悪とは思わない娼婦マノン。
そんな彼女の性癖を理解していながら、盲目に恋に溺れたグリュウ。
ふたりの関係の始まりから終わりをグリュウの回想の形にした小説です。
行動だけを考えれば無思慮で強欲な娼婦ではあるけれど、その姿は無邪気で可憐に描かれている。
そんな彼女に出会ったグリュウの不幸は、マノンに恋をしたからというよりは恋のために知を捨てたからだろう。
若さからくる熱情と困窮から罪を重ねて破滅していくグリュウの姿は、見ていて愚かにさえ思える。
だがすべてを捨てて破滅するほどの恋をしたことがない者に何が言えるだろう。
そんな恋は望むべくもないけれど、彼を支え続けたチベルジュのような友人がいればと思う。