前田蓮山著『原敬』によれば、元老の推挙によって原敬が首相になることが決まった時、前田が原を訪ねて・・・
内閣が成立した日にあいさつすると、原は、「君たちは僕に失望するだろうよ、十年前にやらせてもらったら、
大いにやるつもりであったが、年を取るうちに周囲の事情が複雑になって、自分の思いどおりにはやれないものでねえ」
と声を落としたとか。

政党政治の伸長に文字通り命を懸けたのが原敬だった。・・・
原が政党の発達を妨げるものとして警戒したのが軍部と検察である。
その象徴的人物を挙げれば、前者のそれが山県有朋であり、後者のそれが平沼騏一郎だった。
・・・ところで、毎日新聞政治部『民主党政権』（毎日新聞社）に、
小沢一郎が衆議院総選挙公示二日前の２００９年８月１６日に、
盛岡市の大慈寺を訪れ、原敬の墓前に手を合わせて、こう語ったと書いてある。
「（今は）戦前の昭和史に似ている。大先輩にも今、決意を心の中で申し上げた。本当に大改革を進めると、
どういう目に遭うか分からないが、郷土の大政治家である原先生も愚かな者の手に倒れるまで、
日本の政治のために頑張った。自分としてもそのような志を受け継いでやりたい」