福澤諭吉周辺の人物伝から福澤諭吉を描く試み
★★★★★
リベラルであろうとすることを心情とする佐高信による「福澤諭吉周辺の人物伝から福澤諭吉を描く試み」本である。
夕刊紙の連載であり、論が細切れなところがやや難か。悪口を言い、毒を吐く際の佐高の切れ味が無い。しかしながら、慶應出身者ながら敢えて火中の栗に手を出す佐高の心意気を買いたい。平山洋の『福澤諭吉の真実』の傍証にはなり得る一冊と読んだ。
やはり佐高は、経済人の観察者の経験を活かした清水一行の文庫本の解説執筆が良く似合う。
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★☆☆☆☆
福沢の伝説について述べた書物です。なおその伝説の中には著者の作り出したもの
も含まれます。大部分が引用とフィクションで記されており、その点では類書はありません。
福沢についてのテーマは二つほどでこの点でも人文社会科学に足跡を残した福沢諭吉に
ついての本なのか難しいところです。
京城大院君の乱周辺について記されていますが、主張としてはかなりシンプルで
脱亜細亜論著者ではあったものの金玉均への援助によって悪人ではなくなったというものです。
これについては本書の著者の住井すゑ論と構造は同じであることを著者の読者は知ることが
できます。
例えば小泉信三氏の名著「福沢諭吉」では福沢が早い時期から「ソシアリスム」と「コミニスム」に言及していたことがわかりますが、著者が現在主張するように、
憲法論議において共産党の悪影響を訴え社民党の立場から主張するのをみれば、本書は明治三年の頃の水準に達しているのかどうか検討してみなければならないでしょう。
福沢の言った「民心の改革は政府独りの改革にあらず」といいつつ「我輩の目的は我邦のナショナリチを保護する赤心のみ」という言葉を真剣に考えてみるべきでしょう。
「学問の勧め」意外
★★★★★
「お札の人」以上の諭吉の御勉強をしましょう。太平洋戦争中の彼の思想は?朝鮮に対する思い、もっと大きくアジアに対する考え方、それらは「学問の勧め」でしか彼を知らない人にはおおよそ想像できないかもしれない。だからこそ読んで欲しい一冊。この思いも活動も含めて評価されお札の人になりえたのだ。