自由意思と責任についてのデネットによる哲学書．

ピンカーも避けて通った自由意思と責任について脳についての自然科学的知見といかに両立するかを意識についての整理と進化についての理解を踏まえて真正面から哲学として論じています．

前半の因果関係の部分とか結構興味深い議論（刑法の議論を復習してしまいました．日本刑法の解釈では相当因果関係とかいってお茶を濁しているが考え込むと結構深い問題に行き着くのをはじめて認識）もあったりもするのだが，後半は私の方が息切れ，これだけ進化生物学を踏まえていてもやっぱり哲学書を原書で読むのは疲れます．しかし本書の端々から西洋知識人としてはニューラルネットワークとしての脳を認めると自由意志がないことになり責任を巡る非常に深刻な問!題について避けて通れないのが逆に良くわかります．

決定論を避けるために量子論を持ち出すことはまったくのナンセンスである，そして進化的な選択肢の増大（そして避けることができるかどうか）を考えれば十分自由意思と責任を認めることができるというのが本旨．途中コミットメントにも触れて選択肢を狭めることが問題解決に役に立つあたりについての議論もちょっと面白い．

哲学者の議論については「バカの壁」（関係ないけどこの養老先生の造語はいいね）を崩すのにこんなにも苦労するものなのかというのがふと感じた感想です．