仏さまのお顔の魅力と秘仏に残る彩色への驚き
★★★★☆
大阪観心寺の如意輪観音像の全体に彩色が残っていることに驚く。年に2日しか開扉されない秘仏として信仰・維持されてきたお陰なのだろう。続く15枚の観音さまのカラー写真のお顔は、一体の仏像の顔なのにすべて違った表情として感じられる。写真家小川光三という匠の腕なのか、悩み苦しむ様々な衆生に観音さまが対処されている現れなのか...2つめの少し左下ぎみから撮られた見開きページの幽艶なお顔に一番魅了されている。西村公朝さんによる如意輪観音の形姿の意味説明はわかりやすい。西川杏太郎さんの文から真言密教における仏像の位置づけを学べた。また造仏の技法解説から仏師の技術に感心するばかり。小川さんの神祀りと秘仏の関連性や蘇生の思想への言及は興味深くおもしろい。永島龍弘住職による簡潔な沿革史は、観心寺そのものの変遷に関心を誘うものでもある。台座連弁の図柄がすべて異なるというのも何だか謎めいている。