"99.9F°"(1992)に続く1996年9月発表の5枚目のアルバム。Rolling Stone で★四つ、All Music Guideでは★3つの評価とまずまずですが、チャート・アクション的にはデビュー以来最低を記録した作品になりました(その後の"Songs in Red and Gray"や"Beauty & Crime"は更に売れていませんが)。ロックにシフトした4枚目の延長線上にあるアルバムで、1994‐96年当時にElvis Costelloと活動していたThe AttractionsのBruce ThomasやPete Thomasが参加しています。
このアルバムはデビュー当時の作品を好きな人からは評価の高くない作品です。Suzanne Vegaの声にエフェクトをかけてある曲が多く、彼女の「ぼそぼそ」と歌う感じやアコースティック・ギターの響きが嬉しい僕としても(いい作品と思うものの)あんまり好きになれません。結局一番好きなのはSuzanne Vegaの80年代を想起させる曲調の8曲目でした。
とはいえ、比較的少ないオトで作られた音楽で、シンプルさや暖かさが魅力のRon Sexsmithの初期作品群の雰囲気に似た名作だとは思います(絶賛されたロンセクのファーストと同じ1996年のMitchell Froomのプロデュース作品だから当然ですが)。ボサ・ノヴァ風の人気の高いナンバー「キャラメル」は、メロディを生かしつつ初期のS.Vegaの音楽にないロック色をみせており、Mitchell Froomのプロデュースがいい方向で効いた例と思います。
なんにしても、それほど悪くない作品だと思います。聴かず嫌いしている人が多いアルバムですが、持っていてもいい一枚と思います。