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民権と憲法―シリーズ日本近現代史〈2〉 (岩波新書)

価格: ¥798
カテゴリ: 新書
ブランド: 岩波書店
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日本の近代の礎 ★★★★★
日本の近代の礎が、イギリスやドイツから学んだことは、
漠然とは理解しているつもりだった。
個々のことは、全く記憶にない。

もういちど、明治以降の日本の歴史を紐解いていくと、
今、何をすべきかが分るかもしれない。

新国家の経済と植民地と教育 ★★★★★
 本書では、自由民権運動の展開と収束、松方正義などによる財政の国への影響、北海道や琉球という内国植民地の状況、教育体制、明治天皇などをあつかう。
 秩父事件、大阪事件などについても少しばかりページを割く。
 注目したいのは、脚気に関しては西洋医学よりも漢方の方が進んでおり、そのために日清日露で多くの兵隊が死んでしまったというところ。
 それから、この時代においてより国際的な視点を持つ人たちがいたということ。「三酔人経綸問答」をあらわした中江兆民。朝鮮が日本を警戒するのは豊臣秀吉の侵略があったからだと説く吉岡弘毅。神武天皇もまたその始めは日向の一豪族に過ぎないと書いた東京曙新聞。それに植木枝盛。
 教育において唱歌がこのあたりから始められ、それも西洋経由だというのもおもしろい。
 
文明化と囲い込みの時代 ★★★★★
 本書は1943年生まれの日本近代史研究者が2006年に刊行した本であり、西南戦争から帝国憲法体制が成立するまでの時期(1877〜90年)を扱う。西南戦争が封建復古の可能性を最終的に断ち切った後、士族や地域リーダーを中心とする自由民権運動は、近代国家建設という目標を政府と共有しつつ、その主導権をめぐって争い、むしろ内部対立に悩む藩閥政府を守勢に立たせた。ただし、このためにも自由民権運動は、仁政観念や客分意識を持つ民衆に、自己責任の観念や国民意識を持たせる必要があり、実際には民衆の生活感情とも齟齬をきたしていた。ただしその民衆生活も、学歴主義の浸透、身体の規律化、家制度と良妻賢母像の浸透など、社会の近代化に伴い変貌を余儀なくされていた。こうして文明と囲い込みの論理を西欧諸国と共有した日本政府は、入会地の国有化、蝦夷地・琉球の内国植民地化、脱亜の道を歩み始め、民権派もそれについては大差無かった(この史実から、著者は連帯と侵略との見極め難さという難問を指摘する)。こうした諸勢力の理念や利害が錯綜する中で、天皇主権と立憲主義の複合としての帝国憲法体制が成立したが、内閣には国政を統一的に運営できる権限がなく、いくつもの補佐機関が天皇を取り巻いていたため、天皇が裁定者としてしばしば政治に介入した。また国会議員は制限選挙で選ばれたため、民衆は参政権を持つ国民とそれを持たないただの住民に分断され、それらの総称として臣民概念が登場する。以上のように、本書は当該時期の日本社会の変化の大きな流れを、具体的な史実と明晰な論理で述べている。また、近代化のための苦闘と共に、それが伴った負の側面を明らかにすることによって、あり得た別の可能性をも模索する志向が読み取れる叙述となっている。
看板に偽りありか? ★★★☆☆
 西洋化を志した明治政府は、いわゆる「お雇い外国人」を招き入れ、ヨーロッパを視察し、
そして1889年、迎えるべくして欽定憲法の公布、施行に至った。
 しかし、その傍らで、己が国家、己が権利、己が憲法の樹立を目指して、地方レヴェルから
「自由民権運動」が立ち上げられていた。
 ……と、タイトルから想像される物語が展開されるのははじめの60ページと最終章のみ。
 他の部分は、といえば富国政策や内国植民地など、明治政府の陰の部分を炙り出す記述が
続く。おそらく筆者が書きたかったのはそうした暗部であり、その一例として憲法をめぐる
やりとりの描写がなされている、というのが位置づけの認識としては正しいのだろう。
 各々は極めてよくまとまってはいるし、読むだけ時間の無駄になるような、そのような
粗末な本では決してない。憲法前夜の日本史としては良書の部類には違いない。
 ただし、表題との齟齬にどこか肩透かしを食った、との感は否めない。

 明治史に興味をお持ちの方は読まれてみたらよろしいのではなかろうか。
 ただし、明治憲法をめぐる政府と民権運動の相克の物語を読まれたい方は他を当たられると
よろしいのではなかろうか。
帝国憲法体制の成立までの政治・経済・社会の変化 ★★★★★
本書は帝国憲法体制の形成過程に主眼を置き、
またこれが五つのテーマのうちの一つです。
第二のテーマは政府と民権派とは異なる要素として民衆を描くというものです。
第一章「自由民権運動と民衆」において政府の重税や徴兵制に反対し、
経済的保護の撤廃を叫ぶ民権派にも支持できない民衆が描かれています。
第三のテーマは近代化による人々の生活や意識の変化です。
第三章「自由主義経済と民衆の生活」と第五章「学校教育と家族」において
自由経済の進行により勤勉と自律が人々の意識の内に植え付けられ、
それを学歴主義が支えることになったとしています。
また女性は「良妻賢母」(特に「賢母」)になることを要求され、
女性が「家」と「家庭」の両挟みになったとしています。
第四のテーマは欧米に文明化を要請された日本が周辺地域に
どのように文明化を強制したかについてです。
このテーマは第四章「内国植民地と「脱亜」への道」で展開され、
北海道と沖縄が日本に強制的に編入され、地元住民は「本土」以下の
扱いを受けたと告発しています。
また吉岡弘毅(121‐123頁)と植木枝盛(123頁)の主張を挙げて、
中国や朝鮮の植民地化を正当化した福沢諭吉や民権派の文明論・対外論は
「時代の制約」を理由に免罪できないと強く批判しています。
第五のテーマは「文明的」と「日本化」が相互補完的であるということです。
これは第六章「近代天皇制の確立」において君主の権限の強い憲法でしたが、
政府の「輔弼」と議会の「協賛」がなければ政治運営が不可能であったことを
指摘しています(190‐191頁)。
第二章「「憲法と議会」をめぐる攻防」で松方デフレが豪農層と民権派とを
切り離す極めて政治的な経済政策であった(64頁)と鋭く突きながらも、
全体から見れば印象が弱くなっているのが惜しかったです。
とはいえ、帝国憲法体制が成立するまでの政治・経済・社会の変化を概観できる良い本です。