読後に改めて考えてみると、懺悔・贖罪というテーマが土台になっているようにも思えてくる。このあたり、非キリスト教世界に生きる日本人の多くにとっては、「?」と感じるところもあるだろう。こうした文化的・宗教的な価値観の差異は、外国人として書物に接する限り、どこまでも意識せざるをえないのだろうなぁ、などと思いを巡らすこともできる。とはいえ、文章自体は読みやすいし、素直に楽しめるストーリーではある。
小説の場合、読みやすいのは場面が一つでストーリーが時間軸に沿って進んでいくもの。難しいのは、場面が複数で、しかもそれぞれに時間的な前後関係が生じている――回想場面が突然、話の間に入ってきたりする――もの。
「parallel」では、パラレルワールドを舞台にすることで、最も易しいストーリーから半歩難しくすることに成功していて、Level1の読み物として、上手く書けていると思う。