死屍累々
★★★☆☆
ストーリーを楽しみ、キャラクターに感情移入し、ほんの少しばかりの感動が味わえれば幸い。
読書をする時、そんなふうに考えています。
しかし、最近の流行りは、時間軸をむやみに前後させ、魅力的なキャラを出しては
次々と使い捨て、本筋と関連性の不明確なサイドストーリーと無数のサブキャラをダラダラ描写し続ける。
と、いう方向にあるようです。
未完の本作を、それらと同じと決めつけたくはありません。やや同じ香りを感じ取れるのも
確かですが。
巨大な風呂敷を広げるだけでなく、それをどうたたみ込んでいくのか、その過程で
どう楽しませていただけるのか。
刮目して待っています。
小川一水の小川一水による小川一水のためのSF(敬称略)
★★☆☆☆
上下巻読了後にふと、古典SFという言葉が浮かびました。悪い意味合いでの。
この小説には次の2点を感じました(翻訳ものの古典SFに多いのですが)。
・物語の舞台はアイデアを披露する作者の掌であり
・登場人物は物語を進めるための狂言回しである
物語全編に作り物めいた雰囲気が漂い、展開に胸躍らせることも無く、ページだけが尽きている事に気付き、愕然とする。そんな感想です。
この、氏の世界に触れた時の薄布一枚隔てたような感覚の正体は、幸せになる箱庭(「老ヴォールの惑星」収録)の異星人のように、作中の現場に作者は居らず、神の視点から物語を組み立てているからかも知れません。
また、以前より氏の著作は既視感があると言われていた様ですが、私も「天冥の標T」を読んで感じました。「出来ること全て」という過去の自著のパロディ、「できるかわからない」という古典・他書のパロディ、「やったことのない」流行を追ったあざとい人物設定とミスリードによるドンデン返し。この小説は思いつく限りの部品を我儘に、継ぎ目を気にせず自分のために組み立てた実験作なのではないでしょうか。
しかし私が気付かなかっただけで、作者としては十分に警告していたのかもしれません。タイトルからして「天涯の砦」と似ているではありませんか!
SFは歴史のある分野ですから完全オリジナルというのは不可能かとは思います。ですが、だからこそ胸躍る物語や、隣に登場人物がいるかのような躍動感が欲しいのです。それは重厚な表現や緻密な設定、計算された展開と決して矛盾しないものだと思います。
小川一水さんは書き手として中堅で決して拙くはないのですが、この地、ハーブCには胸躍るものが無かったのが残念でした。
氏の作品を初めて手に取る方には、「老ヴォールの惑星」「フリーランチの時代」がお勧めです。アイディアに富んだ短編があなたを出迎えてくれるでしょう(同時に古典と呼ばれるSFを読むこともお勧めします!)。
しかし。SFとは何なのでしょうか。
一体何の略なのでしょうか。
この二文字に、作者はどんな願いを込めるのでしょうか。
う〜〜ん…?
★★★☆☆
上巻読了時の感想は、「う〜ん…下巻読むのどうしよう…」でした。
みなさんの評価がいいのに、下げてしまい心苦しいですが、SF一大叙事詩になるような予感は今のところ、ありません。
人物に対する愛着もまだなく、世界観についてもまだやっとわかってきたという段階で、わくわくするような設定はないように思います。
長編の1巻の上巻ですからこんなもんですかね。
でももっと引きがあってもいいはず。ラストでちょっと引っ張ってますが、こんなもんじゃ「あー早く下巻読みたい!」とならないです。
SFは大好物で、この作者も好きなだけに、かゆいところに手がとどかないというか、もどかしい感が強いです。
最近、国内外に面白いSFが少なく、ライトノベルばっかり元気がよくて、こういう正統派のSFは少ないように思います。なので、こういうシリーズが始まると期待大なのですが。
とりあえず義務として下巻を読んでから続きをどうするか決めたいと思います。
ああ、もっとワクワクするSFが読みたいーーー!
日本SF史に残る一大叙事詩(になりそう)
★★★★★
とりあえず1巻を読了しましたが、これは凄いことになりそうですね。
大河長編の1巻なので、キャラ紹介や舞台の解説が逐次入り、スロースターター気味な内容ではありますが、そのぶん私の頭の中に世界観がしっかりと構築されつつあるので、逆にウェルカムでした。
また、これは個人的な好みですが、過去の科学技術が完全に失われているわけではなく、メニーメニーシープのそこかしこに科学技術の片鱗が残されている点も、今後のSF的展開を期待できて、ゾクゾクしました。もしメニーメニーシープが過去の科学技術を完全に忘却したという設定で、中世のような世界になっていたり、あまつさえ剣と魔法系の世界になっていたら、恐らく私は1巻の読了時点で放り出していたと思います。
これが2巻の後書きにあるように全10巻に及ぶ超大作になり、このテンションを維持できるのであれば、本作は並み居る海外のSF大作群に堂々と肩を並べる、一大SF叙事詩になる可能性を秘めていると思います。翻訳物と異なり、著者の高い日本語表現力のおかげで、日本人との親和性も抜群ですし。
今後の展開に大いなる期待を込めて、星満点で。
これから、思わず「ぬぉー!」と叫んでしまうような、度肝を抜く逸脱と爆発を期待しています。
よろしくお願いいたします。
小川一水全部載せ
★★★★★
遙か未来、地球から旅立った人々、いや人々だけと限らず体を調整した人類、未知の知性体”達”にアンドロイド、ソフトウェアだけの存在と、登場人物達だけでも盛りだくさん。
その彼らのいる世界がどのような姿の世界なのかも含めて全てが五里霧中。まるで我らに窺い知れぬ羊の夢の中のよう。
今の小川一水の全てが注ぎ込まれるであろうこの物語がどのように紡がれ、どのような着地点を見いだすのか今から楽しみです。
評価は期待値込みではありますが、読む価値アリだと思います♪