聖杯の騎士ガラハッドの登場に端を発し、絶頂を迎えた円卓の騎士団が聖杯の神秘を求めて冒険に旅立つ。ログレスの王妃グウィネヴィアとの禁断の愛ゆえに聖杯の神秘に与ることを許されないランスロット。やがて幾多の冒険の果て再会を果たしたガラハッド・パーシヴァル・ボールスらの前に聖杯の神秘が明かされる。
聖杯は、それを探求する者の魂が希求するものをその神秘によって見せるという。この物語は多くの象徴に満ちていて、三人が神秘の中で何を目にしたか、ガラハッドが最期に見たものは何か、明かされることはない。物語の意味は、それを読む者によって様々に異なるだろう。
途中冗長に感じる部分もあるかもしれないが、多くの示唆に富んだ物語である。
本書を最も象徴する一言である。この「アーサー王と聖杯の物語」では、繁栄の絶頂をすでに越えてしまったアーサー王のお話で、円卓の騎士が聖杯を求めて、冒険に出て行きます。しかし、その先にあるのは、円卓の騎士同士での戦い、親子での戦い、兄弟との戦いなど、読んでいてとても心が苦しくなるシーンがたくさんあります。また、ランスロットには、大きな喪失感、重い罪悪感といった試練が降りかかります。しかし、円卓の騎士が、できる限りのBestを尽くして、少しでも良い結果を得ようと努力するのですが、その悲劇を避けることができません。
わたしは、この本を読んで、心のそこから求めるものに対しての「人間の無力さ」を、感じました。そして、同時に、心のそこから求めるものに対して、「人間が如何に勇敢であるか」ということが、心の中に響いています。